9月10日にロシア極東ウラジオストクの東方連邦大学(FEFU)で始まった東方経済フォーラム(EEF)。13日まで開催されるこのフォーラムに、北朝鮮の金正恩総書記が出席するのか、世界が注目している。10日現在、正恩氏のロシア入りは確認されていないが、今後、電撃的に訪露してプーチン大統領と会談する可能性はなくなっていない。
同フォーラムは、2015年から始まったロシアと諸外国におけるそれぞれの分野の専門家らによる交易会で、昨年はロシアを含めた68の国と地域から700社の企業が参加したとされる。
「正恩氏はかつて、2019年4月25日に1度だけ、プーチン大統領とウラジオストクで会談したことがありますが、その時はロシア側から支援を取り付けることが叶わず、思うような成果が出せなかった。結果、不機嫌になった正恩氏は予定を変更してすぐに帰路についたと言われています。しかし、現状のロシアは長引くウクライナ戦で武器弾薬が枯渇している。一方、北朝鮮には豊富に武器がある。4年前とは180度異なるシチュエーションなのです。会談が実現すれば、正恩氏がプーチン氏からどのような譲歩を引き出すのかに注目が集まっています」(全国紙国際部記者)
弾薬と砲弾の確保が切実な問題となっているロシアと、外貨と食料の獲得が喫緊の課題である北朝鮮とでは、互いに必要な部分を埋め合うことができるという、まさにWin-Winの関係にあるのだ。
「北朝鮮製の武器弾薬は、ソ連時代やロシアの技術をベースに作られているため、そもそもの規格が『ロシア基準』で、すぐに実戦で使用できるのです。ただ、これまでは国連安保理が定めた対北朝鮮制裁決議の手前、武器取引は公には行われていませんでした。しかし、首脳レベルで合意されたとなれば、今後、両国の連携がより緊密になることは必至です。となれば、正恩氏が忌み嫌う日米韓の軍事訓練に対抗し、今後、朝露による共同軍事訓練が行われる可能性も否定できません。これに中国が加われば、新たな世界冷戦の始まりもあり得ないことでなく、朝鮮有事がより現実味を帯びてきたといえるでしょう」(前出・記者)
そんな中、専門家が懸念するのが、足元を見られたプーチン氏が、正恩氏の求めに応じて、ロシアが持つ軍事衛星や原子力潜水艦、核兵器開発についての高度な先端技術を提供してしまうのではないか、という点だという。
「これまで、北朝鮮は長距離ミサイルや極超音速弾道兵器、原子力潜水艦、スパイ衛星などのハイテク兵器開発に着手してきましたが、運用には依然として苦慮しているというのが現状です。そのため、武器弾薬と引き換えに、ロシアの最先端技術を要求するのではないかと見られているのです。むろん、ロシアも簡単に応じることはないでしょうが、今後両国の関係がより緊密になれば、技術提供も現実味を帯びてくるはず。中国べったりだった北朝鮮がロシアに舵を切る可能性もあるということです」(前出・記者)
期せずして「ウクライナ特需」により圧倒的優位に立った北朝鮮。今後の動向が大いに気になるのである。
(灯倫太郎)