佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」一見おトクなあなたの医療保険、実は大損かもしれない

 毎日のお仕事ご苦労様です。今週は57歳のあるマジメな会社員の入った医療保険の話。入院したら1日5000円、最大で60日分の保険金が下りる契約。だから入院すると最大で30万円の給付金が支払われることになる。

 長年仲よくしてきた友人から勧められて50歳の時に加入。毎月の掛け金は8500円だ。

「掛け捨てではないってところがいいでしょう」

 この保険は確かに「掛け捨てではない」「入院1日目から保険金が下りる」「保険料は一生涯値上がりしない」と、いいことばかりのように聞こえる。加入してから20年後の70歳の時には「健康祝い金」も支払われる。その額125万円。

 この会社員は50歳で契約したので、これまでの7年間で計71万4000円、健康祝い金の出る70歳までの20年間で、計204万円を支払う計算になる。誰にでもわかる金額だ。つまり20年で204万円払って、125万円を返してもらう保険契約のため、79万円も損をする。

 損をするという表現はひどいという人もいるだろう。「入院初日からお金が出て、最大30万円の入院給付金の保険がついているじゃないか」というわけだ。

 しかしこの保険は、例えば10日間の入院をして5万円の保険金を受け取った場合、健康祝い金の125万円から、その金額が差し引かれてしまう。70歳の時に満額の125万円を受け取るためには、それまでの20年間、健康であることが必須条件なのだ。

 ちなみに、払った保険料より、もらう保険料が上回るのは、70歳までに408日間の入院、つまり、60日間も入院する大病を7回以上わずらった場合である。

 こう考える人もいるだろう。「70歳で健康祝い金を受け取ったあとに入院することもあるだろうから、その時に給付金をもらえばいいじゃないか。年を取れば取るほど入院するケースが多くなるんだから」と。

 それもよくわかる。

 しかし、考えてほしい。70歳で満額の125万円をもらっても、それまで差し引きで79万円を支払っており、さらに70歳以降も毎月8500円を払っていかなくてはならない。仮に70歳から85歳までの15年間の支払い額は153万円。ということは、健康祝い金を受け取ったあと、60日の長期入院を何回も何回も繰り返して、やっと経済的にはトントンになる計算なのだ。

 そもそもこの保険は、1回の入院でもらえる最大の保険金30万円に値する掛け金を3年で払うことになる。つまり、3年間、自分でお金を貯めれば、保険会社の世話にならなくても、そのくらいのお金は自分で用意できるわけだ。

 この保険のカラクリに80歳になってようやく気づくと悲劇が待っている。いつ保険の世話になるかわからない年齢になった時に止めると、それまでの支払いがすべてムダになる。だから、止められないのだ。

 いざという時のために保険に入ることを否定するつもりはないが、払う掛け金と、それによって返ってくる保障をきちんと比べてみることが必要なのである。

 この57歳の会社員は結局、契約を解除して、掛け金の安い県民共済の保険だけにして、あとはコツコツ貯めることにした。コツコツ貯めた貯金は病気やケガをした時に使えばいいし、元気でピンピンしていたら老後資金、いや、遊ぶお金に使ってもいい。会社員は「これこそ本当の健康祝い金ですね」と笑ってくれた。

 とはいえ、7年間で71万円払い、契約を解除して戻ってきた返戻金は19万円。差し引き52万円がこの契約に飲み込まれてしまった。

「この保険を勧めてくれた人は、長年付き合いのあるいい人なんですけどね」

 お金を損したこと以上に、信頼していた気持ちが裏切られたようで悲しそうだった。皆さんも自分の保険をチェックしてもらいたい。ではまた来週。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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