スペイン連盟会長の「キス加害」で幕!女子サッカーW杯“日本で報じられなかった”大会模様

 8月20日に行われた決勝戦で、イングランドを1−0で下したスペインの優勝で幕を閉じた女子サッカーワールドカップ。すると初優勝を遂げたスペイン選手はもちろん関係者は大喜び…とここまでは良かったのだが、優勝セレモニーでスペインサッカー連盟のルイス・ルビアレス会長が選手の唇にキス。もちろん“喜びのあまり”で許されるはずもなく大炎上。翌21日には、ルビアレス会長は謝罪するハメになった。さらに同国では、代表監督がゴールを喜ぶ際に女性スタッフに不適切なボディータッチをしていた疑惑も浮上。これらセクハラ騒動が尾を引くかもしれない。

 だがこんな騒動で幕引きとなったのも、ある種、今大会の雰囲気を投影したものと言えるかもしれない。今大会は、とりわけ賞金の多寡などW杯サッカーの男女格差がかなり意識され、クローズアップされた大会だったからだ。

 例えば大会2連覇中で、世界の女子サッカー界をリードしてきたアメリカ代表が、ベスト16にも入れず敗退したことで、アメリカ国内では古い政治的対立を際立たせた。

「あのトランプ前大統領が敗戦を受け、自前のメディアTruth Socialで『ナイスショット、ミーガン。アメリカは地獄に落ちる』と発言したのです。これはPKを失敗したミーガン・ラピノー選手を『ナイスショット』と皮肉っただけではない。ラピノーは19年にアメリカサッカー連盟を相手に、男女の賃金格差の解消を求めて訴訟を起こした反保守の進歩派の人物で、今大会ではアメリカ代表が国歌斉唱を拒否したことで話題になりましたが、その中心的な人物だったからです。19年のフランス大会前には優勝しても『クソホワイトハウスには行かない』と発言し、当時大統領だったトランプを激怒させました」(サッカーライター)

 一方で、こんな話もある。ブラジル人サッカージャーナリストのリカルド・セティオンは今回のW杯を「女性の女性による女性のための大会」だったとして、例えばブラジルの記者は8割が女性だったが、あるテレビ局のレポーター2人が男性だったことで「なんで男がいるんだ」とSNSで炎上したエピソードを日本のメディアで明かしている。

「今大会から、出場国も男子W杯と同じ32カ国に増やして男女差をなくしたのですが、ただ女子サッカーは男子ほど競技人口がいるわけではありませんから、国や連盟ごとのレベル差が露呈。予選では6−0といった大差の試合が多数生まれました」(同)

 挙げ句、日本では視聴率に見合わない高額な放映権料を支払うテレビ局が決まらず、開幕のわずか1週間前に辛うじてNHKが滑り込んだことは広く報道された通りだ。

 だが、今大会で快進撃を果たしたその日本でも、かつては全く同じような場面があった。橋本聖子元東京オリ・パラ大会組織委員会会長が、14年のソチ五輪のスケート競技の打ち上げパーティーで高橋大輔選手に口チューを強要。もちろんこれも大問題になったが、キスではないが最近では、河村たかし名古屋市長が女子選手の獲得した金メダルを噛んでバッシングを浴びた。

 だから、つまらない結論としては、どうも年寄りの偉い人は男女の別、洋の東西を問わず、この手のことをやってしまい、これを変えるのにはそれなりの時間を要するということなのかもしれない。

(猫間滋)

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