佐藤治彦「儲かる“マネー”駆け込み寺」消費税率は一律ではなく地域で変える それが地方再生につながる最善の策!

 9月27日に投開票が行われた自民党総裁選には、若手からベテランまで9人が立候補。この原稿を書いている時点では岸田首相の後任が誰になるかはわかっていないが、地方が強固な地盤になっている自民党らしく、候補者たちからは、ふるさと創生やら、都市と地方の格差縮小といった、地方に目配せをする言葉が乱舞した。

 私は2020年から、これまでにないくらいのペースで日本中を旅行している。車の運転をしないので、地方に行けば鉄道やバスを利用するし、スーパーや商店など、土産物店以外の地元の店にもよく入る。

 テレビ番組では、地方で暮らす人たちが、野菜や魚などの生鮮食料品を「知り合いからもらうので買ったことがない」といった発言がよく流されている。なので「地方で暮らすとお金がかからず、安上がりなんだろうなぁ」と思ってる人もいるかもしれないが、決してそんなことはない。

 はっきり言うと何でも高い。ちゃんと野菜も果物も肉や魚も売られていて、それらは東京よりもずっと高い。卵、牛乳、ヨーグルト、パン、豆腐、冷凍食品、漬物、しょうゆ、みそ、菓子など、食品の他、日用品なども高い。

 どのくらい高いのかというと、私の住む東京都世田谷区は、都内でも食料品や日用品が安い地域ではないけど、そこと比べても、ざっくり1割高である。

 全国的に価格が統制されていると言っていいビールや日本全国にチェーン店を持つ大手100円ショップの値段は変わらないが、総菜や弁当なども含めて「魚の産地なのに、どうして東京よりも高いんだ」と不思議に思うくらいだ。

 日本全国を巡って「この店は総じて安い」と思えたのは、九州を中心に展開するドラッグストアの食品部門くらい。この店の食品は安いのだが、医薬品や洗剤などの日用品は安くない。食品を安くして、ついでに日用品や医薬品を買ってもらう戦略なのだろう。

 ただ、都会より高いといっても、地方ではモノがどんどん売れていく。他に価格を比べる店がなく、商品が手に入ることをすごくありがたいことだと思っているのだろう。店側も地域の生活を支えているという意識が高い。なので、皆、淡々と買っていく。

 しかも地方は食料品だけでなく、一戸建てが多いこともあり、光熱費は高くつくし、一般的に水道代も高い。バスや電車といった公共交通は、本数が少なく不便なのに運賃は高い。安いのは賃貸住宅くらいだ。

 それなのに収入は地方の方が安い。特に最低賃金やそれに近い給料で働いている人も少なくない。政治家の皆さんが、日本の地方再生を言うのなら、ヘンテコな駅前再開発にお金を使うのではなく、もっと住人の財布を助けるような政策を行ったらどうか。

 例えば、地方だけ食料品や光熱費にかかる消費税を低くするのだ。食料品は全国どこでも8%だが、それを3%にする。日用品や処方箋以外の薬品、光熱費は5%、バスや鉄道は0%にしたらどうだろう?

「そんなこと、できるわけがない」と思う人もいるかもしれないが、アメリカなどは州を跨ぐと消費税が変わる。だから週末になると、隣接する消費税の安い州へ買い物に行く、なんてことも珍しくないのだ。

 人口の少ない地方のスーパーや商店などに、わざわざ近県から買い物にやって来てくれるようになれば、売り上げが増え、経営基盤は強化され、価格も下げる余裕が出てくるかもしれない。

 実際、アメリカでやっているのだから、日本でできないわけがない。与党の皆さん、地方を大切にすると言うのなら、せめてこのくらいのことは考えてもらいたい。特に奄美大島、五島列島、佐渡島、大島、沖縄の島々は、本当にいいところだけど物価は高い。まずは、こうした島部から消費税を下げてほしい。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。8月5日に新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。

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