「恒大集団」破産申請は中国経済の“終わりの始まり”「中華版リーマンショック」に備えよ【緊急レポート】

 まだお盆休み気分が抜けきらぬ8月18日、苦境にあえぐ中国経済を象徴するニュースが飛び出し、世界に衝撃が走った。経営再建中だった中国の不動産業第2位の「恒大集団」が米国で破産申請したからだ。
 
 動揺はすぐさま世界のマーケットに波及した。東京市場では中国関連銘柄が下落し、日経平均株価は3万1450円と2カ月半ぶりの安値を付けた。
 
 問題は、米国での破産申請により、中国政府の不動産政策が破綻したと国民からみなされ、中国経済が急激な悪化に向かうことだ。
 
 既に問題は表出している。中国の不動産最大手である碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は恒大集団の経営危機が表沙汰になった際、「当社に経営危機はあり得ない」と余裕の声明を発していたが、ここに来て2023年1〜6月期が450億〜550億元(9000〜1兆1000億円)の最終赤字になる見通しを発表するなど、「第二の恒大」と化している。

 不動産業不振の影響は、関連の鉄鋼、セメント、ガラス、家具など多くの産業に打撃を与え、これらの会社が軒並み破綻ないし、瀬戸際に追い込まれている。中国のGDPの3割を不動産業が稼いでいたことを考えると、この影響は計り知れない。
 
 それだけに、市場関係者は今回の事態を「中国経済の終わりの始まり」ととらえ、中国発のリーマンショック超えの金融危機を警戒すべきという。
 
 中国では、これまで何度も地方の金融機関に取り付け騒ぎが起きている。それでも経済に揺るぎはなかった。しかし、現在中国で起こっている金融危機はそうしたレベルを遥かに超えている。

 不動産不況の影響は、金融当局の監督が緩い「影の銀行(シャドーバンキング)」を直撃している。影の銀行とは、典当(質屋と訳されるが中国では最も歴史のある金融機関で、規模は日本の信用金庫に相当する)から国有企業や民間企業の金融部門、地方政府などが設立した金融機関など幅が広い。
 
 影の銀行で最初に問題になったのが、地方政府が打出の小槌のように利用したインフラ投資会社の「融資平台」である。
 
 不動産ブームが地方へ広がった2000年代後半、融資平台は地方政府によって雨後の筍のように設立され、不動産開発や建設業の資金調達において大いに役に立った。だが、不動産開発に陰りがみえると、最初に影響を受けたのも地方の融資平台であった。
 
 その後、融資平台は軒並み破綻状態に陥ったが、次に問題となっている「影の銀行」が信託大手である。信託商品が償還停止となり、投資家が返還を求めて殺到する騒ぎが頻発しているのだ。なぜ、これがヤバいのか。
 
 中国の金融は銀行系とノンバンク系の二つからなる。中国の銀行はほとんどが国直轄の国有銀行と地方政府系の地元系銀行で、融資の対象は国有企業と地方政府系企業だけだった。
 
 つまり、民間企業が融資を得るにはノンバンクを頼るしかない。ちなみに、今年6月末の総融資残高は銀行系が230兆元(約4600兆円)、ノンバンク系が134兆元(2680兆円)で、ノンバンク系の比重はかなり高い。このノンバンク系金融機関を、未曽有の不動産不況が直撃しているというわけだ。
 
 中国の信託大手に、中国の並み居る投資ファンドが株主に名を連ねる「中融国際信託」がある。この“中融”が運用する信託商品の支払いが滞っているのだ。中国最大の投資ファンドの流動性が危機に陥り、約15万の投資家に利払いが不能になっていることを考えてみてほしい。
 
 これは明らかに「中国版リーマンショック」の前兆である。

(団勇人・ジャーナリスト)

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