夏場は札幌や函館、新潟、小倉など地方開催となるJRA。もちろん夏競馬も気温の高い日中に開催される。地方競馬はナイター競馬を開催しているため、ファンの間では中央競馬にもナイター導入を求める声もあるが、検討するといった話は聞かれない。
気温35度以上の猛暑日の割合は全国的に増加傾向にあり、近年は夏バテを起こす競走馬も少なくない。なかには8日に放牧先の北海道で死亡した昨年の菊花賞馬・アスクビクターモアのように熱中症を起こすケースも報告されている。
「暑さ対策で北海道以外の各競馬場の馬房にクーラーが設置されましたが、真夏の炎天下ではコース上の気温は40度に達します。馬も人間と同じで、発汗によって体温調節を行うがそれにも限界がある。夏バテでコンディションを落とす馬が多く、7月29日のGⅢ新潟ジャンプステークスでは1番人気のフォッサマグナも熱中症と思われる症状で競走をとりやめています」(競馬記者)
競走馬の体調を考えれば、ナイター競馬のほうが負担が少ないのは明らかだが、なぜそういった議論すら行われないのか?
競馬開催に関する様々なルールが書かれた「日本中央競馬会競馬施行規程」の第68条にはかつて《競走の数は、1日につき12以内とし、日出から日没までの間に行う》とあったが、現在は《競走の数は、1日につき12以内とする》に改正。ルール上はナイター競馬の開催が可能になっているようだが…。
「JRAの場合、競馬場の多くは周辺に住宅地があり、夜間に騒音や渋滞などの問題が発生すると地域住民の理解を得るのは難しいでしょう。また、すでにナイター開催の地方競馬や競輪、ボートレースなど他の公営ギャンブルと競合することになり、これらの売り上げが減少するとの懸念もある。そうした問題もあってJRA側も慎重なようです」(同)
とはいえ、現状のままでは熱中症でダウンする馬は今後さらに増える可能性が高い。毎年各地で最高気温を更新する中、抜本的な暑熱対策が求められている。