ビッグモーター社員が明かした「アメとムチ」恐怖支配の真実(2)「高金利で車を買わされる」

 前社長の息子である兼重宏一前副社長の「教育」「死刑」の文字が並ぶ罵倒LINEが象徴するように、同社では幹部社員や管理職によるパワハラが横行していた。営業成績について恫喝まがいの叱責をすることもザラで、上位者の出席する会議に遅刻をして、それだけで一発降格、左遷、あるいは退職を迫られることもあったという。それを象徴するのが、除草剤の散布や街路樹の無断伐採につながった「環境整備点検」である。40代の元社員が語る。

「宏一前副社長が実権を握った5、6年前から、一気に締めつけが厳しくなりました。店の前の道路に落ち葉1枚あるだけで降格、机の上にペン1本転がってるだけで降格ですから」

 加藤氏は、「『環境整備点検』は、職場環境改善のためではなく、社員を辞めさせるための粗探しをする場になっていたようです」とし、こう付け加える。

「全然派手じゃない茶髪だったり、座ったまま挨拶をしたというだけで、宏一前副社長は『あの人、明日から来させないで』と通達。とある工場長は、そう言われた翌日には社員番号が抹消され、その上、会社都合ではなく『自主退職』を迫られたそうです。宏一前副社長は社員から『辞めさせ屋』と呼ばれていたとか」

 元社員が続ける。

「500人入社して1年後までに490人が辞めた年もあるほど離職率は高かった」

 退職届の「退職理由」の欄には、「一身上の都合」と「定年」「結婚」の選択肢しかないというあまりの非常識に加藤氏も驚くばかり。

「これまでに延べ4万人近くが辞めています。社員育成の意識は皆無と言っていいでしょう」

 同社は「従業員6000人」を謳うが、もはや辞めさせるために求人を出していたのではないかと勘繰ってしまう。なぜそんなことを? 加藤氏から重要な真相が語られた。

「ビッグモーターの社員は、自分の車両購入や車検、保険加入は自社で行うことが義務づけられ、家族の車の車検時期を提出することも強制されています。この保険料がまた高くて、辞めた元社員の話では、他社の保険に入り直したところ半額以下になったそうです。それから同社は車を買う際のローンの金利も高く、一般客は9.8%も取られます。社員は4.9%に割り引かれますが、新入社員で初めて車を買うような、金利の仕組みもよくわかっていない人は、ほぼ全員9.8%で買わされるそうです。私が確認した、過去の同社の経営企画書では、採用基準として『新車のディーラーで2年以上勤務した者は採用しない』という項目がありました。無知である方が都合がいい、ということかもしれません」

 些細な事柄で会社から使い捨てにされた上、暴利までむしり取られていたとは‥‥。企業体質を根本から見直す必要がありそうだ。

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