「ぶっ殺すぞ」「でくのぼう」−−そんな乱暴な言葉が現場で飛び交っていたというビッグモーター。兼重宏行前社長の一連の言動や街路樹への除草剤散布など、まだまだ「事件」は沈静化しそうにないが、ビッグモーター問題の核心は、やはり保険金の不正請求だろう。そして、この問題で同社との癒着を疑われているのが損害保険ジャパン(損保ジャパン)である。金融庁が、同社がビッグモーター向けに簡易査定チームを設けていたことを問題視し、詳しい報告を求めているのは周知の通りだ。
ところが、そんなビッグモーター問題よりもはるかに大きな疑惑としてあがっているのが、大手損保会社による「カルテル問題」なのだ。そして、そこにも損保ジャパンの名があるのである。
疑惑が浮上しているのは損保ジャパンの他、東京海上日動火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、三井住友海上火災保険の4社だ。
「損保会社は法人との契約でリスクを分担するために、複数社で保険契約を結ぶ『共同契約』をすることがありますが、その際、この4社が事前に価格の調整を行っていたのではないかという疑いがあるのです」(社会部記者)
複数の企業が共同して販売価格や販売個数などを決めるカルテルは、独占禁止法によって禁じられており、違反した場合は刑事罰や課徴金の納付が科せられる。金融庁は6月、東急グループに対する火災保険の保険料が事前に調整されていた疑いがあるとして、4社に対し、報告徴求命令を出していた。
だが、4社の疑惑はこれにとどまらなかったのである。
「4社は他にも、京成電鉄、旧西武系ホテル施設、ENEOS、JR東日本、千葉都市モノレール、成田国際空港などに対する保険料に関してもカルテルの疑いが持たれていることが新たに判明したのです。カルテルが常態的に行われていた可能性も指摘されていて、今や疑惑の拡大に歯止めがかからない状態ですね」(前出・記者)
カルテル禁止の目的の1つは消費者保護だ。カルテルによる販売価格の高額設定は巡りめぐって商品価格の高騰につながり、消費者に不利益をもたらしかねない。
不正の規模や悪質度により、課徴金が数百億円になるケースもあるという。ビッグモーター事件も気になるが、カルテル問題の行方も大いに注目されるのである。
(猫間滋)