少し前までは人気の副業の1つで、専業にしている者も多かった「せどり」。一方、「転売ヤー」と呼ばれ、転売目的で仕入れた商品を高額で売りさばく者も跋扈しているネットの物販業界。販売店側は購入制限や抽選購入などを導入したり、コンサートチケットの場合は転売禁止や会場での本人確認といった規則変更が設けられている。
その結果、せどりも転売ヤーも、以前より商売としてのうまみが減ってしまったと言われる。ただ、そんな状況でも安定した人気を誇るのが「中古ブランド品」だという。
5年ほど前から副業で転売を行う40代の会社員Sさんが仕入れるのは、経年劣化などで状態があまりよくないブランド物のバッグ。仕入れコストを抑えられ、補修によって商品価値が上がり、転売時に利益を確保しやすくなるそうだ。
「例えば、革の部分が剥げている場合は、まずブラシやパフなどで表面のほこりを取り除きます。そのうえで艶出し用のレザー用ローションと革の色に合ったクリームを混ぜ、色味を調節して塗るだけ。ローションやクリームは、業者が使用する物がネットで1000円台で購入できます。この程度なら初心者でも可能ですし、やり方を説明するユーチューブの動画もありますよ」
また、中古バッグは内側の革がボロボロと剥がれる「粉吹き」と呼ばれる状態になることが多く、そのまま使っていると中に入れている物が粉まみれになってしまう。ブランド品でも価値を大幅に下げてしまうことになるが、これもしっかり補修できるという。
「粉吹きは年季物のバッグに多く、その分安く仕入れることができます。最初にデッキブラシ、残った細かな部分は歯ブラシを使って革の表面をそぎ落とします。そして、重曹を溶かした水を染み込ませた布で革を拭けば補修完了です」(Sさん)
ちなみに転売市場にはファスナーなどの金具部分が壊れているバッグも出品されている。ただし、交換用の純正部品は一般には手に入らず、市販用の部品で直すと価値を下げてしまう。この場合は利益を出すのは難しいため、金具の補修には手を出さないのが無難だという。
「基本的に革の部分に限定した補修なのでハードルは低いです。作業時間はバッグの状態にもよりますが1個あたり1時間もかかりません。物によってはヤフオクやメルカリで仕入れ値より2万円くらい高く売れますし、安くても1個3000円から5000円の利益は期待できますね」(Sさん)
安価で買って相応の値段で転売するという従来のやり方に、「補修」というひと手間を加えた「進化系せどり」。試してみるのもありか。