ベラルーシ「欧州最後の独裁者」参戦で、忍び寄る「第3次世界大戦」の足音

 依然として膠着状態が続く、ロシア軍によるウクライナ侵攻だが、東部での攻撃が強くなる一方で、首都キエフ周辺ではロシア部隊の後退も伝えられる。こうした事態を開するため、ロシアが生物・化学兵器を使用する可能性が日に日に高まっている。

「ロシア国防相は『ウクライナが化学物質を使った攻撃を計画している』と発表しましたが、西側諸国はこれを“自作自演の偽旗作戦”とし、自らが生物・化学兵器を使用する口実にしようとしていると断じています。ロシアの狙いはむごい化学兵器を用いることでウクライナの戦意喪失させるシナリオとされますが、バイデン米大統領は『ロシアが生物・化学兵器が使用すれば厳しい代償を払うことになる』と警鐘を鳴らしています」(軍事ジャーナリスト)

 ところがそんな中、ロシアの友好国で「欧州最後の独裁者」と称されるルカシェンコ大統領率いるベラルーシが近く、ロシアのウクライナ侵攻作戦を支援するために参戦するという、ニュースが大きな波紋を広げている。

「米CNNテレビが、米国やNATO当局者の話として伝えたもので、これまで防御に専念していたウクライナ軍が南部を中心に攻勢に転じたことで、ロシアがベラルーシに援軍を要請。ロシアの軍事同盟国であるベラルーシではすでに数千人規模の戦闘部隊が組織され、早ければ数日以内にウクライナに侵攻する準備を整えている、というのです。もともとロシアは、ベラルーシとの合同軍事演習を大義名分として、戦前から数千人のロシア兵をウクライナ国境に集結させていました。首都キエフに向けロシア軍が進軍したのもベラルーシから。ロシア軍はベラルーシの飛行場を使っており、ウクライナへのミサイル攻撃も、ベラルーシ内からロシア軍が発射している。すでに事実上、ロシアはベラルーシを後方拠点として利用しているのです」(軍事ジャーナリスト)

 ベラルーシは天然資源に恵まれず、エネルギーの自給率は1割程度。石油の大部分もロシアからの供給に依存している。ロシア同様、米欧の制裁を受けているために他に頼る先がなく、ウクライナ侵攻後もプーチン政権への依存は強まるばかりだ。

 1994年に政権を握ったルカシェンコ大統領は、その強権的な政治手法で有名。西側諸国からたびたび批判されてきた人物だが、かつては野党の集会に参加する者は誰であれ「テロリスト」として扱うと警告。「そんな連中は、首を絞めてやる。カモのように」と付け加え、2005年には当時のブッシュ米政権がそんなルカシェンコ氏を「暴政の前哨基地」を率いる「欧州最後の独裁者」と呼び、話題になったこともあった。

「ルカシェンコ氏が選挙のたびに不正を指摘されながらも長期政権を築けたのは、ソ連崩壊直後、周辺国で経済的混乱や政変が続く中、社会主義型の経済や社会保障を維持したことで、国民の間に一定の支持があるからこそ。ただ、新型コロナウイルスについて『ウオッカを飲めば消毒できる』と非科学的な発言を繰り返すなど言動には極めて問題があり、いったんこうと思ったら何をやりだすかまったく予想のつかない人物としてしても知られています。そんな人物が追い詰められたプーチン大統領とタッグを組めば何が起きるのか。しかも、ベラルーシで2月末に行われた憲法上の国民投票では、核の中立政策を放棄、ロシアの核ミサイルが国内に配備されることが可能になった。万が一、生物・化学兵器や核兵器が使用されればNATOも動かざるを得ず、そうなれば第3次世界大戦の引き金となりかねません」(同)

「2人の独裁者」の動向が注視される。

(灯倫太郎)

*画像はNHKニュースより

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