ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は4月14日、「特別軍事作戦の終了宣言をすべき時がきた」との声明をSNSに投稿した。ウクライナ軍に敗北する可能性にまで言及しており、「目的達成まで軍事作戦を全うする」とするプーチン政権の見解とは真っ向から対立する。実はこのブリゴジン氏、2月にもSNSで政府当局を批判しており、ことのときは「プーチン抹殺」の可能性まで報じられている。AsageiBizの3月6日配信記事を以下にーー。
2月中旬、自身のメッセージアプリ「テレグラム」で、ロシア正規軍のトップであるショイグ国防相とワレリー・ゲラシモフ参謀総長を厳しく非難した、民間軍事会社ワグネル・グループを率いるエフゲニー・プリゴジン氏。
ワグネルは、昨年からロシア中の刑務所を回り、囚人をスカウト。大きな存在感を発揮してきたが、今年1月のドネツク州ソレダル制圧に関し、「これはワグネルではなく正規軍による功績だ」とする軍部の主張に反発。今後一切囚人を戦地に送らないと宣言し、公然とロシア政府当局と対立したことで、蜜月だったプーチン大統領との関係にも亀裂が生じ始めたとの報道もある。
そんな中、ウクライナのキーウ・ポスト紙が報じた、ある驚くべき記事が波紋を広げている。国際ジャーナリストが説明する。
「同紙に談話を寄せているのは、ジェイソン・ジェイ・スマート氏という、長年にわたり欧州の政治キャンペーンで相談役を務めてきた重鎮です。彼によれば、プーチンとの距離が出来たことで、プリゴジン氏は自らがトップへの階段を駆け上がる絶好のチャンスと捉えている可能性あるとのこと。ただ、そのためにはプリゴジン氏には正当な手続きや理由が必要となる。選挙なしでトップの地位を主張すれば、ロシア連邦憲法に抵触するからです。そこでプリゴジン氏は、ロシアの所有する核兵器を手中に収め、西側に取り入って、欧米を『後ろ盾』に権力を掌握する可能性があると…。にわかには信じられない話ですが、プーチンの盟友として彼を知り尽くしていることに加え、自らも軍隊を持っているプリゴジン氏なら絶対にありえない話ではないとして、憶測が憶測を呼んでいるのです」
そんな報道と符合するように、ゼレンスキー大統領は「プーチン大統領は最終的に、自分に最も近い側近に殺されるだろう」とコメント。2月24日、ロシアのウクライナ侵攻1年目に公開された、ウクライナ人ジャーナリストのドミトロ・コマロフが制作したドキュメンタリー映像「A Year」の中の一幕である。
「作中、ゼレンスキー氏は『プーチン政権が脆弱化する時は必ずやってくる』として、『その時、肉食獣は肉食獣に食われる。それは重要なことだが正当化する理由が必要だ。彼らはコマロフやゼレンスキーの言葉を思い出して、殺人者を殺す理由を見つけるだろう。うまくいくのか、いつになるか、それはまだわからない』と述べています。つまりプーチンは結局、側近に寝首をかかれて自滅するのではないかというのです。果たしてそれがプリゴジン氏のことなのか? 動向が注目されます」(同)
昔から日本には「敵に味方あり味方に敵あり」という諺があるが、はたしてプリゴジン氏の胸中は…。
(灯倫太郎)