この報道が事実なら、ウクライナの前線にいる「ワグネル」はいま、本当にとんでもない事態になっているようだ。
1月29日、ウクライナメディア「The New Voice of Ukuraina」が伝えたところによれば、最近、東部ドンバス地域の戦いで負傷した約300人のワグネル傭兵がロシア軍が占領するルハンシク州ユヴィレイネ市の総合病院に移送されたのだが、検査すると兵士の大半がエイズや梅毒、結核といった感染症の保菌者であることが判明。医療スタッフが彼らの治療を拒否しているというのだ。ネタ元はウクライナ軍参謀部の報告書だという。
「ウクライナ軍当局はすでに昨年10月に、ワグネルがエイズや肝炎などの感染が判明している囚人を雇っていることを指摘していました。彼らの手首には、エイズなら赤、肝炎なら白といったリストバンドがはめられ、ワグネル軍内部で保菌者であることを識別していたというのです。かねてからワグネルの囚人兵は『弾除け』とも言われ、仮に負傷しても退却が許されず、許可なく退却すればすぐに処刑されるという報道もあります。まさに地獄絵図ですね」(ロシアウォッチャー)
そんなワグネル内部の惨状をあざ笑うかのように、対立を深めるロシア正規軍からは嫌がらせとも思える命令を下されていた。
英メディアのザ・テレグラフによると、今月初めに総司令官に就任したゲラシモフ参謀総長が突然、ロシア軍人全員に非公式軍服・民間車両・携帯電話などを禁止、さらに頭髪とひげを短くするよう命令を下したというのだが、この背景にはワグネル部隊に対する陰険な嫌がらせがある、と推測しているのだ。
「そもそもワグネルはロシアの正規軍組織ではないため、軍服も支給されていません。しかも、多くが刑務所から直接最前線に連れてこられるため、頭髪もひげも伸び放題になっている。つまりゲラシモフ氏のこの命令は、ワグネルの囚人兵に対するものであることは明らか。要は嫌がらせ以外の何物でもないわけです」(同)
この命令に対し、ワグネルのプリゴジン氏はSNSで「戦争はきれいに髭を剃った者ではなく、勇気ある者が行うもの。我々戦士はウクライナ軍と戦うのに忙しくて髭剃りする暇はない」と反論しているが、正規軍による嫌がらせはエスカレートしているとも伝えられる。
ドンバスの戦線に配置されたワグネル兵士約5万人のうち4万人が囚人だとされるが‥‥この地獄絵図は当分続きそうだ。
(灯倫太郎)