米がウクライナに「マラリア蚊爆弾」を提供した! ロシア司令官の驚愕発言が波紋

 ゼレンスキー大統領の発言通り、ザポリージャから東と南へ向け「一歩ずつ」、確実に進撃を続けているウクライナ軍。そんな中、またぞろロシア側が驚くような主張をし始めた。

 19日、ロシア軍放射線・化学・生物学防護部隊のイーゴリ・キリロフ司令官が記者会見を行い、米国がマラリアなどに感染した蚊を利用した生物兵器をウクライナに提供して、大規模生物学戦を起こす計画を企てていると主張したのだ。

 会見の模様を伝えた英デイリーメールなどによれば、同司令官は、米国防総省傘下の研究機関ではかねてからウエストナイル熱やデング熱などの感染性に感染させる蚊の研究が進められており、これらの蚊は容器に入れられ、それをドローンを使って戦場にばら撒く計画が準備されている、と強く訴えたというのである。

「これらの蚊に刺されれば危険な伝染病が蔓延することになり、しかも戦禍の中で治療が受けられなければ死に至る可能性もある。ただ、生物兵器の使用は1925年の国際条約『ジュネーブ議定書』で禁止され、その後75年には生物兵器の開発、生産、保有などを禁止する『生物兵器禁止条約』が発効し、むろん米国も国際条約の締結国であることは言うまでもありません。何よりそんな兵器を戦場に放てば、ウクライナ軍も同様に感染してしまうはず。毎度のことながら荒唐無稽としか言いようがありませんね」(ロシアウォッチャー)

 さらにキリロフ司令官は、今月初めにヘルソン地域で起こったダム崩壊による洪水に言及。「水が引いたあとに病原体を持つ蚊が媒介となり疾病が生じる可能性がある」と主張するなど、あたかもダム爆破は、米国とウクライナ側がその後の生物学戦を見据えたうえで計画したものと言わんばかりの持論を展開したというから驚くばかり。

「今回に限らず、ロシアは昨年3月から米国がウクライナで生物兵器開発に関与していると主張し続け、同5月の国連安全保障理事会の緊急会合でも、ロシアの国連大使が『新たな証拠が見つかった』と激しくまくし立てる場面もありました。当然、米国側は9月の生物兵器禁止条約(BWC)会議で『ロシアのでたらめな主張』と反論していますが、米当局もまたぞろ出てきた陰謀説にウンザリといったところでしょうね」(同)

 ただ、ロシアが何か事を起こす前に、西側に対しとんでもない主張を繰り返し、それによって行動を正当化するのは常套手段。そう考えると、ウクライナによる大規模反攻で切羽詰まったロシア軍が、自身が主張してきた「マラリア蚊」ばら撒き作戦を実行する可能性も否定できなくなるが…。

「旧ソビエト時代からロシアは『炭疽菌』や『天然痘ウイルス』『ペスト菌』など、さまざまな病原体を兵器利用するため研究を続けてきたことは有名な話。実際カザフスタンには炭疽菌生産施設があり、国内にも天然痘ウイルスの生産・貯蔵施設も存在していた。しかし化学兵器禁止条約締結国になったことで、それらの施設は閉鎖されたと聞きますが、兵器がすべて廃棄されているかは疑問。しかも生物兵器には、核兵器を使うよりずっとハードルが低いという怖さがありますからね」(同)

 生物兵器も核兵器や化学兵器と同様、無差別に大勢の人を殺傷する「大量破壊兵器」であることに違いはない。ロシア軍が間違っても使用しないことを祈るばかりだ。

(灯倫太郎)

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