6月は株主総会が1年で最も集中する時期。最近の話題は、いわゆる「アクティビスト(モノ言う株主)」の株主提案が吹き荒れていることだ。
「6月の総会で株主提案を受けている企業は、過去最高の90社。セブン&アイHDは米投資ファンドに井阪隆一社長らの退任要求をつきつけられ、結局5月25日の株主総会で否決されましたが、大きな注目を集めました。またエレベーター大手のフジテックでは、創業家出身の前会長が香港の投資会社にその座を追われ、訴訟にまで発展するお家騒動に。6月21日に行われた株主総会では、主導権を奪還しようと元会長が提出した社外取締役の選任案が否決されました」(経済ジャーナリスト)
つまり、主に海外ファンドの投資家と経営者との間で繰り広げられる欧米流株主資本主義ともいうべき対決の光景が、近年の株主総会の主流となりつつあるのだ。
そんな殺伐とした〝対決〟がある一方、株主の〝愛〟が目立つ総会というものもある。その代表格が、西の阪神電鉄(現・阪急阪神HD)と東のバンダイナムコHDだ。
6月16日、阪急阪神HDの株主総会が行われ、質疑応答の冒頭は「阪神の監督として岡田(彰布)さんを招聘して頂き、心から感謝申し上げる」というものだった。同社への質問は会社の業績をよそに、阪神タイガースの成績とチーム状況に関する質問が目立つことで知られているが、今季の阪神は現在絶好調。しかも生え抜きの主砲が監督に再登板したうえでの好調なので、阪神ファンとしては口調も丁寧なものになる。
東のバンダイナムコHDの株主総会が行われたのは、6月19日。こちらは株主の間では「株主総会」ならぬ「株主フェス」と呼ばれる。コスプレイヤー株主が駆けつけるからだ。
そして今年現れたのは、金髪のロングヘアのかつらにピンク色のフリフリな衣装を身に着けた、アニメ「アイカツ!」の主人公・星宮いちごの格好をしたコスプレ株主。また、同社が提供するスマホゲーム「アイドルマスター シャイニーカラーズ」に登場するキャラ・大崎甘奈のライブ法被を着た株主も現れた。
「阪神は今季チームが好調なため、例年はあるチーム批判は鳴りを潜めました。代わりに批判がましい質問と言えば、オレンジの電車をやめろというもの。ただこれは5、6年前から出ている質問で、ジャイアンツカラーが気に食わないということでしょう。バンダイナムコHDの株主総会の最初の質問も、8月に開催されるコミケグッズの通販を行う予定はあるかというもので、ほのぼのとした脱力感がありました」(同)
会社の成長を見込んで株を買うのが本来の株主だが、会社の業績そっちのけという意味では、ファンとも言うべきか。いやそれよりは、愛がないのが投資家で、愛があるのが株主ということなのかもしれない。
(猫間滋)