1日に捌く商品は100〜200トンほど。少数精鋭を余儀なくされる中小企業には残業がつきものなのだという。
「この倉庫は2つのシフトで回っている。ウチらの場合は13時〜22時が定時だけど、毎日3〜4時間の残業が当たり前。ただ、これが収入的においしいんだ。リフトマンの雇用形態は、人材派遣会社からの『派遣』。今の俺は時給1200円で給料が計算されているんだ。それが深夜になれば、時給1800円に膨れ上がるってわけ(笑)」
週5.5日勤務で月収は額面33万円弱。ボーナスこそないが年収400万円弱を見込める。もう一方のシフトの定時は早朝5時〜14時。同じリフトマンでも業務内容は大きく異なる。
「ウチらの作った梱包をトラックに積み込む。日によりけりだけど、だいたい朝9時前後には終わるかな。その次は倉庫に届く商品の入荷作業。倉庫内の棚に整頓して、同時進行で在庫状況も確認する。結局、こっちの場合も残業で、帰るのは17時〜18時くらいになる。いずれのシフトでも、翌日の仕事に差し障るから平日は飲みに行けないよ」
それもプロ意識あっての行動なのだろう。それだけに、シニアが挑戦しようにもフォークリフトを乗りこなす技術習得に時間がかかりそうなものだが─。
「いや、無免許でも仕事は可能だよ。まあ、完全に慣れるまでに1カ月はかかるかもしれないけどね。ひたすら、クルクル回るハンドル操作やフォークの上げ下げの反復練習を繰り返すしかない。現状、猫の手も借りたいくらい人手不足だから、引退した爺さんも大歓迎。ネットで調べれば募集はいくらでもあるよ。マストではないけれど、自動車学校が運営している『フォークリフト運転技能講習』を受講して就職するのも1つの手だね。普通自動車免許を持っていれば4万〜5万円の費用で、4日間の学科と実技の講習を受けられる。逆にこの期間に運転が難しいと思ったら、やめたほうが賢明だろう」
そう言い放つと、フィルターギリギリまで短くなったタバコを灰皿に捨てた。そして、最後にこう言い残して作業に戻っていった。
「最近は、ヘルメットをしないバカ野郎が増えているらしい。現場仕事は慣れてきた頃に大事故に遭遇するもの。生死に直結するだけに、くれぐれも〝ノーヘル〟だけはNGだよ。夏頃にフォークリフトでブランコ遊びをして亡くなった小学生の女の子がいただろ? 重さ100キロのパレットが頭に直撃したと聞いた。そもそもブランコ遊びが危ないが、この子がヘルメットを被っていたら命までは落とさなかったかもしれない。なんとも浮かばれない話だよ‥‥」
何事も安全第一。そこさえ徹底すれば、体力を持て余すシニアにはオススメの業種である。
*週刊アサヒ芸能11月17日号掲載