入門マニュアル「シニア再就職のリアル」〈マンション清掃員〉(1)雨風にさらされる階段だけは念入りに

 22年度の「国民年金」満額支給額は年間77万8000円のみ。もはや年金収入だけでは快適なシニアライフはおろか、孫に渡す小遣いの工面すら一苦労。以下、せめて短時間でサクッと稼ぎたい向きにはドンピシャの仕事と言えまいか。

「まず朝8時に駐車場をホウキで掃く。それが終われば、次は自転車置き場に取りかかるんだ」

 日々の業務手順をこう語るのは、マンション清掃員の蔵元道夫さん(75)=仮名=だ。4年前、関東地方に本社を置く清掃会社にパートタイマーとして登録。以来、都内にある10階建て102世帯の分譲マンションに週3日勤めている。

「屋外清掃で大変なのは今のシーズンだけ。秋口は大量の落ち葉を集めるのに骨が折れるからね。どこのマンションも、屋外から屋内の順番で清掃する。屋外を終えたら、ウチの場合は1階から10階までの共用廊下と左右2カ所ある階段をホウキで掃く。ここまででおよそ1時間30分。残り時間でエントランスのガラスやメールボックスの雑巾がけ、床のモップがけ、共用トイレの清掃。最後に、使用したゴム手袋を洗って終了だよ」

 なんと、ここまでの工程を1人で2時間30分以内に完了させなければならないのだ。当然ながら、バカ正直にこなしていれば全部はやり切れず、タイムオーバーとなる。

「念入りにやるのは、雨風にさらされる階段だけ。砂埃や虫の死骸なんかで汚れやすいから、1段1段必ずホウキで掃くようにしている。でも、それ以外は手を抜いているよ。普通にやっていたら、お茶を飲む暇もないからね。ガラスも床も目に見える汚れが必ずしもあるわけじゃないし、やり残しを住人や巡回に来る本社の社員に特に指摘されることもない。まぁ、細かいところは、3〜4カ月周期で回ってくる『定期清掃』に任せればいい。本社の人間5〜6人が高圧洗浄機できれいにしてくれるから」

 それでも、夏場は共用廊下の側溝に手を焼くことがしばしばある。

「夏場に使用するエアコンの排水の影響で、砂埃や髪の毛がヘドロ状に溜まってしまうんだよ。デッキブラシで磨くけど、コーナー部分にはブラシが届かない。そこで、役に立ったのが『クイックルワイパー』の本体。これでゴシゴシこすると汚れが取れる優れものだよ。1日に全部のフロアは無理だから、日ごと階を変えて掃除しているね」

 時給1300円。実働2時間30分だから、1勤務あたり3250円の収入だ。

「ウチの会社は4時間勤務が基本。なのに、勤務するマンションだけ時間が短く設定されている。本当は時給1100円だけど、会社に交渉したら、すんなり時給アップにOKが出た。別の中高層マンションにも週1日勤務して、休日にイレギュラーで応援に駆り出される分を足すとおよそ7万円の月収になる」

 決して高給ではない。しかし、セミリタイヤした年金受給者にとっては、大きな生活の糧に他ならないのだ。

*週刊アサヒ芸能11月3日号掲載

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