入門マニュアル「シニア再就職のリアル」〈警備員〉(2)風呂の巡回でヤバいトラブル

 まず大前提として、警備員は防犯、防災に携わる重要な職業である。誰でもなれるというわけではない。

「警備業法で定めたところでは、アルコールや薬物の中毒者はもちろん、前科アリの人は刑の執行を終えてから5年以内は警備員になれません。また、警備会社に入社する際には、前の勤務先に経歴調査の連絡が行きます。履歴書にヘタなウソは書かないことです」(求人サイトの関係者)

 なお、これらの条件をクリアした後、警備未経験者は20時間以上の新任教育を受講。現場に配属された後も「自衛消防技術試験」「防災センター要員講習・自衛消防業務講習」「上級救命講習」といった資格の取得が求められる。

 こうした壁を乗り越えて一人前の警備員になってはみたものの、陰湿なイジメで職場を追われては身も蓋もない。その点、「1名体制」の現場ならば、人間関係で悩むことはないはずだ。

 そこで2人目に紹介するのが、今年65歳の松本幸雄さん(仮名)。関東の大学の学生寮に常駐している警備員だ。

「基本的に学生は素直ですよ。敷地内に集まって酒を飲んで騒いだり、タバコをポイ捨てしたりする寮生もいますが、毅然とした態度で注意すれば、大抵は言うことを聞き入れてくれます。学生も寮を追い出されるのは避けたいでしょうからね。もしこれが一般のマンションなら、住人に対してなかなか強くは言えませんがね。警備室ではいつも自分1人なので、制服を脱ぎ捨てて下着姿のままベッドでダラダラ過ごしています」

 18時から翌朝9時までの勤務で日給は深夜手当込みで1万3000円。月収は20万円強になるというが、ワンオペならではの苦労もあるようで、

「寮の建物は全部で6棟ありますが、それらを全て見て回らなければなりません。歩いて約1時間かかる巡回を夜に3回、朝に1回。共用部や廊下には冷暖房もなく、階段の上り下りが多くてヘトヘトになります。建物や防災設備も古いため、4時間しかない仮眠時間中に警報機の誤報に叩き起こされたり、大雨の浸水を防ぐために夜通しで土嚢を積んだこともあります。寮生が事故で流血した時は救急車の手配、関係各所への連絡と大わらわでした」

 過去にはこんなトラブルも。

「この学生寮は共用風呂になっており、巡回ポイントのひとつ。使用時は内側から鍵をかけるのですが、ある夜、無施錠を確認してドアを開けると、中にはスッポンポンの女子学生が‥‥。悲鳴を上げられてすぐに退散しましたが、頭が真っ白になりました。幸い女子学生が騒ぎにしなかったから問題にならなかったものの、下手すりゃクビどころか警察を呼ばれて訴訟沙汰になってもおかしくありませんでした」

 1人勤務だからこそ、不慮のアクシデントに対応する心構えが必要とされているのだ。

*週刊アサヒ芸能10月20日号掲載

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