入門マニュアル「シニア再就職のリアル」〈レンタル重機清掃員〉(2)人間関係のトラブルは皆無

 清掃員は1日に3〜4人が出勤してくる。3人いても、作業場に置かれる重機は2台ということもよくあるという。

「重機によっては、片輪上げたりして幅を取るからな。かといって、1台に2人で取りかかるようなことはせん。だからそうした場合、1台に40〜50分かけて清掃しとる間、1人は休憩や。楽やろ?」

 代わる代わる、休み休みやりながら作業自体は各々が担当する。そのため、人間関係での煩わしいトラブルも皆無だそうである。

「年寄り同士、地元の人間同士やから若いのみたいにケンカなんかにならんな。会社も年寄りに対して偉そうには言わんしな。そもそも作業しとったら、それぞれの持ち場やから話すこともないわ。朝出勤した時に挨拶すんのと、お互い手止めてる時にすれ違って『お疲れさん』ぐらいなもんよ」

 9月末や3月末など、工事が多いシーズンに入るとさすがに重機の台数も増えてくるが、それ以外はとにかく緩やかな職場環境だと笑う。

 となれば、あと気になるのは作業時間や収入の問題だ。

「時給900円で、この3年上がっとらん。ワシが仕事入れとるんは午前中だけやから、たった4時間。週3〜4日程度出とるけど、計算してみい。大した稼ぎにはならんやろ? 趣味でやってるようなもんや(笑)」

 とはいえ、時間はいくらでも余っているだろう。もちろん、やろうがやるまいが自由であるが、もう少し仕事を入れたいとは思わないのだろうか。

 すると坂本氏は笑みを浮かべてこう言うのだった。

「年金貰うとるとな、働いた収入が多すぎても税金で持ってかれてしまうんよ。それやったらアカンから、こんなもんでええんちゃうかって調整しとる」

 その上で、カラクリを披露するのだった。

「実はもう1カ所、土木作業の現場で運搬の仕事も掛け持ちしとるんよ。こっちは申告なしでいいように貰うとる(笑)。年寄りに無理はさせられんって、8時から16時半までの勤務中、2時間程度の休憩もあって、運搬のみで1万円貰えるんやからな。気ぃ遣うてもろて、老人天国やわ」

 当連載も最終回を迎えたが、いずれもシニアたちがたくましく働いている様子が伝わってきたものである。

*週刊アサヒ芸能11月24日号掲載

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