デモには日本人妻ばかり…「旧統一教会」発祥・韓国ではなぜ霊感商法が問題にならないのか

 8月31日、韓国・ソウル市内にあるテレビ局・MBCの前に、およそ4000人もの旧統一教会の信者たちが集結した。歩道にステージを設置し、スピーカーでシュプレヒコールを送っている。大規模抗議集会だ。

 きっかけは、韓国MBCテレビの報道番組だった。
 
 この前日、MBCの老舗報道番組「PD手帳」で、安倍晋三元首相の銃撃事件を取り上げた。日本や韓国にいる元信者へのインタビューを通じ、「この63年間、日本の統一教会の献金は韓国社会でほとんど知らされたことがありません」と、教団の過酷な献金実態を伝えた。そして、「日本の統一教会スキャンダルが、どのように政治的外交的影響をもたらすのか、見守らなければならない」と結んでいる。

 この放送に対し、旧統一教会が「一方的な宗教弾圧だ」としてMBCに謝罪を求めたのだ。

 旧統一教会によるメディアへの抗議デモは先月18日にもあったが、これは日本のマスコミに対するもので、韓国ではこのデモを取り上げるメディアはなかった。

「むろん、安倍元首相襲撃事件は韓国でも大きく報じられ、その背景に旧統一教会があったことも報道されています。しかし、事件はあくまで日本で起こったことで、容疑者も日本人。しかも、旧統一教会じたい韓国ではあまり知名度がない教団なので、事件後はほとんど報じられていません。18日の抗議デモも韓国マスコミは一切スルーでした」(韓国在住のライター)

 ただ今回は、テレビ局前での抗議デモとありニュースとして流れたが、前出のライターは「とはいえ、これ以上に掘り下げることはない」と言い切る。

「日本人妻のことはかつて話題になりましたが、こちらでは霊感商法の被害者も出ていない。ですから、旧統一教会に対する関心が薄いのです。こちらでは『統一教(トンイルキョ)』と呼び、数あるキリスト教系の一教団にすぎない。日本では合同結婚式や霊感商法で社会問題になりましたが、韓国では宗教団体というより、龍平リゾートや飲料会社、学校などを運営する企業グループとしてのほうが有名です」(同)

 統一教会は文鮮明が「世界キリスト教統一神霊教会」として1954年に韓国で創設。日本で64年に宗教法人の認可を受けると、80年代に入り霊感商法による被害者が急増。社会問題になったことは周知のとおりだ。しかし、教団発祥の韓国では「統一教」の知名度は低く、前述のように霊感商法が話題になったこともないという。

「韓国はクリスチャンが多く、プロテスタントとカトリックを合わせれば、3割程度がキリスト教徒です。あと仏教徒が2割くらいいて、国民の約半数が何らかの宗教を信じています。そんな中でいかがわしい霊感商法をやったら、叩き潰されるのが目に見えている。もともと韓国のキリスト教徒からは統一教は異端視されていますから、下手な動きはできない。教会もそれはよくわかっているでしょうから、韓国人信者に対して多額な献金を求めるようなことはせず、その代わりに日本人から莫大な寄付をさせるというわけです」(同)

 やはり日本人信者は「カモ」にされているというわけだが、今回MBC前での抗議デモに集まった信者もその大半が日本人妻とその子供たちだった。教団に対する日韓の温度差はこれほど大きいのだ。

(灯倫太郎)

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