石破茂「憲法改正は今後、多様な意見が出てくるかもしれない」/テリー伊藤対談【2】

テリー おっしゃる通りだと思いますけど、そういう空気が自民党の中に生まれますか。

石破 それは、それぞれの議員が今の日本をどう考えるかじゃないでしょうか。

テリー どれだけ危機感を持ってるかどうか?

石破 そうですね。私は参議院選挙の間も、「あと80年でこの国の人口は半分になるんですよ。それも人口構成比として、若い人は少なくて、私も含めて高齢者がいっぱいになるんです。そんな中で日本の財政、社会保障の持続可能性を考えなきゃいけないんです。人口が減るって、こんなに怖いことなんですよ」と全国で言って回りました。

テリー 人口が減ると、いろいろなことが破綻しますよね。

石破 破綻というか、資本主義の前提が色々変わってしまうんですね。教科書的な資本主義は人口が増えることを前提としていますから。そして金利はいわば「お金の値段」なので、金利がゼロということは、お金の値段がつかないということになる。適切な金利も資本主義の前提ですよね。もう一つ、「よりいいものが欲しい、もっとたくさん欲しい」という消費者の欲望というのも前提。

テリー そうですよね。

石破 だから、「その大前提である人口がどんどん減るって、すごく怖いですよね」という話を、私はここ10年ぐらい日本中でしてるんですけど、あんまりそういうことを言う人は、他には増えてないような気もしますね。

テリー 例えば、安倍さんが亡くなって、憲法改正にしろ、議論のスピードは上がるんですか。それとも逆にブレーキがかかる?

石破 わかりませんが、自民党内でもう少し多様な意見が出てくるかもしれない、とは思っています。安倍総理がいわゆる四項目を出されてから、自民党内の議論はそれ以上に広がりませんでしたから。

テリー 改めてどこがダメだったんですか。

石破 ダメということではなくて、本来、改憲政党として幅広い議論を提起しなければいけないはずの自民党の議論が行き詰まっていたような気がするんです。全般的な案としては、今でも平成24年の自民党の憲法改正草案が有効なはずです。これを上書きして、憲法第9条の1項、2項の「陸海空その他の戦力はこれを保持しない」というところを残しながら、3項に「自衛隊を持つ」と書くのは、やはり論理としてはおかしくなる。でも、自民党の中でそれを言うと、みんなシーンとなってしまう雰囲気がありました。

テリー なんでですか。

石破 後から「その通りだ」と言ってくれる人も何人かいたんですけど、みんなの前ではそんなことを言いづらい雰囲気があったんだと思います。今後はもう少し幅の広い議論ができるようになるといいなと思います。

テリー 安倍さんは、そこを矛盾するとは思ってなかったんですか。

石破 安倍総理も論理矛盾は承知しておられたと思うんです。でも「憲法に自衛隊と書けば違憲だと言われなくなる、そっちのほうが大事だ」という考え方だったんだと思います。また、この案のほうが理解を得やすいとか、とにかくいったん改正をしてみるべきだとか、そういう意見もあったんでしょう。そこは考え方の違いなんですね。

テリー なるほど。

石破 安倍総理の憲法改正への熱意は本物だったと思います。だから、残された我々は、もう少しピュアに、何が国家のためなんだろうということを考えて、きちんと議論をすることが、安倍総理の残された思いを継ぐことになるんだろうと思いますね。

*テリー伊藤対談【3】につづく

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