神田伯山「お客さんが喜べば講談は何でもアリ」/テリー伊藤対談(3)

テリー 「このつまんない講談界を変えるんだ!」って講談師になりましたよね。そのために最初に手を付けたのはどこだったんですか。

伯山 枕ですね。いちばん最初の導入です。昔の講釈師って人によっては、20ある物語のいきなり3話目から入るんですよ。例えば連続ドラマの3話目から見せられたら、「ちょっと1、2話の解説もしてよ」って思うじゃないですか。それをお客さんが知ってる前提で、いきなり3話目から入るんです。

テリー そうか、知識がないとダメなんだ。

伯山 だから「何の知識もいりません。僕が知識や背景は肉づけしてお伝えするので、まったくの真っ白で来てください。座ってるだけでいいです」っていうのは、かなり意識的にやったかもしれないですね。逆に言えば野暮ったく、長くなってはいると思うんですけど。

テリー じゃあ、僕みたいに講談に詳しくもないし、「歴史とか難しいこともわかんないな」っていう人間でも伯山さんの高座は大丈夫だ。

伯山 と思います。

テリー あとね、落語の場合は、落語家さんが自分で話をアレンジすることもあるじゃないですか。講談は?

伯山 まったく同じです。100%アレンジしても構わないです。

テリー あ、そうなんだ。例えば、この本にも「赤穂義士伝」が出てきますけど、あれなんかも勝手に変えちゃっていい?

伯山 というか、そもそも「赤穂義士伝」がめちゃくちゃアレンジされてまして。例えば「赤垣源蔵徳利の別れ」っていう話があるんです。弟討ち入りに行く前日兄貴のところを訪ねる。でも兄貴は留守で、壁にかかっている兄貴の羽織を見ながら酒を飲むんですね。で、雪がしんしんと降る中、「兄上、さらば」と言って、スッと別れていくという名作なんですけど。

テリー ほぉ。

伯山 でも、史実を調べると赤垣源蔵にそもそも兄貴がいないんですよ。

テリー ええっ!?(笑)

伯山 で、下戸なんですね。その日、雪も降っていんです。しかも「赤垣」じゃなくて「赤埴」というの本当の名前。つまり、何にもないんですね。

テリー なさすぎですよ。

伯山 でも、だからこそ「そうか、極端にフィクションでもまったく問題ないんだ」っていう講談の自由さみたいなものは、そこで勉強になりましたね。「兄弟の情が真実なら、元は何にもなくていいんだ」と。

テリー 何でもアリなんだ。

伯山 そですね。昨日と今日の赤垣源蔵が違っていても、まったく問題ないんです。今、目の前のお客さんが喜んでくれてればいいんですよ。

テリー もう何にも知らなくて申し訳ないんだけど、そうすると講談にも新作があるんですか。

伯山 あります。ずっと昔からいろんな人が新作をかけてますよね。今も「ガンダム講談」とか読んでいる方もいます。

テリー ああ、そんなのもあるんだ?

伯山 あらゆるものが、すべて講談になる感じです。

テリー 伯山さんは新作は?

伯山 前に「ONE PIECE講談」をやらせていただきましたね。「ONE PIECE」の新刊が出た時に、その宣伝動画をYouTubeで公開するということで集英社さんからお話をいただいて。僕が講談を読みながら、後ろにONE PIECEの漫画を載せたり、僕がちょっと小さくなったり、大きくなったり。見せ方は難しかったですけど、やってみると意外にイケますね。

テリー 相性がいいんだ。

伯山 そうですね。その動画もけっこうバズって。講談っていろんなジャンルと相性がいいですね。

ゲスト:神田伯山(かんだ・はくざん)1983年、東京都生まれ。2007年、三代目神田松鯉に入門し、「松之丞」に。2012年、二ツ目昇進。2020年、真打昇進と同時に「六代目神田伯山」を襲名。「神田伯山のこれがわが社の黒歴史」(NHK)、「問わず語りの神田伯山」(TBSラジオ)にレギュラー出演中。YouTubeチャンネル「神田伯山ティービィー」にて動画配信中。最新著書「講談放浪記」(講談社)発売中。

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