石破茂「格差が開いた以上、税のあり方を見直さないのはおかしい」/テリー伊藤対談【4】

テリー 戦争だけが原因じゃないですけど、物価がどんどん上がって、円安も続いて、みんな困ってますよね。将来的に自民党は消費税を下げることはあるんですか。

石破 消費税が導入されたのは平成元年なんですね。景気が良ければドーンと入ってくるけれども、景気が悪くなると入らないのが法人税や所得税の直接税。逆に消費はそんなに上がったり下がったりしないから、消費税はかなり安定的に入ってくる。高齢化がどんどん進む中で、景気に左右される所得税や法人税より、安定して入ってくる消費税を医療とか介護とか、そういうものに充てましょうねっていう考え方だったんですよ。

テリー もう30年以上も前の話ですよね。

石破 消費税は、所得の低い人にとって税負担が重いわけですから、導入する前提は、格差がそれほど大きくない社会でした。今のように格差が開いてしまった以上、そのあり方をまったく見直さないというのはおかしいことだと思います。

テリー そうなった時、減った分の財源はどこから持ってくるんですか。

石破 普通に考えればさっきの逆ですから、法人税とか所得税になります。「もっと所得の高い人から取るべきだ」と言われますが、所得はフローで、ストックである資産にうまく課税する仕組みが日本にはないんです。コロナの給付金も、所得の低い人にこそ配るべきだった。「みんなに10万円を配るより、本当に困ってる人に30万円配ったほうがいいよね」と。でも、個人個人の資産や所得の状況が正確に把握できてない。だから今、マイナンバーと口座を紐づけしてください、ということをやっていますよね。これをきちんと機能させるのが先だと思うんですね。

テリー お金をたくさん持ってる企業からはどうですか。

石破 内部留保ですね。でも、税金を払った後に残るのが内部留保ですから、そこから取ると二重課税になってしまいます。それに企業が内部留保を持つのは、景気が悪くなった時に金融機関がお金を貸してくれないことってよくありますから、そのためにというのは、中小企業ほど強く考えますよね。

テリー そうですね。

石破 だから、「そういう時こそ政府が支えます、なので安心して設備投資や人材育成に使ってください」と言えるような仕組みを作れないかと思うんです。政府がずっと経済を支えるなんて不可能です。でも、コロナ禍のような突発的な原因で一時的に危機になった時に、一時的な所得を支えたり、再教育の費用を国が持ったり、機動的な融資や投資をしたり、という柔軟な制度が作れないかなと思ってるんですけどね。

テリー ぜひ、実現させてください、じゃあ最後になりますけど、これから石破さんはどういう政治家を目指すんですか。

石破 最近出した本(「異論正論」)の帯に「嫌われても、言う。」って書いてあるんですね。嫌われてもウケなくても、ポストが得られなくても、言わなきゃいけないことってあると思うんです。だから「お前は世渡りが下手なんだよ」って言われるんだけど。

テリー ねぇ。僕ね、石破さんの言うことって、いつも正論だと思ってるんですけど、なぜか全然いいポジションにいないじゃないですか。これって世渡りが下手すぎませんか?

石破 アハハハハ、いいんですよ、それで。

テリー ダメですよ。もっとゴマすってもいいから中心にいて、実力を出してくれないと。譲歩して、長いものに巻かれたフリをしながら、うまく立ち回るとかあるじゃないですか。そうやっていいポジションにいって、自民党を内部から改革してください。

石破 そうですね、勉強します(笑)。

〈テリーからひと言〉

 せっかく正しいことを言ってるんだから、国民のために実現させてほしいよね。そのためにちょっとでいいから世渡りのテクニックを磨いてください。

石破 茂(いしば・しげる)1957年、鳥取県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。三井銀行(現・三井住友銀行)入行。1986年、衆議院議員に全国最年少で初当選。2002年、第一次小泉内閣の時に防衛庁長官で初入閣し、その後も防衛大臣、農林水産大臣、政調会長、幹事長、地方創生・国家戦略特別区域担当大臣などを歴任する。最新著書「異論正論」 (新潮新書)発売中。

*「週刊アサヒ芸能」8月18・25日号掲載

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