「NATO加盟」は難航? フィンランドとスウェーデンの半端ない軍事力とは

 18日、フィンランドとスウェーデンが、NATO(北大西洋条約機構)への加盟申請書を提出。NATOのストルテンベルグ事務総長は、「すべての加盟国がNATO拡大と一致団結の重要性を認識している。両国の申請は、歴史的な一歩です」と歓迎の意を表明した。
 
「ロシアと1300キロに渡り国境を接しているフィンランドは、第二次世界大戦でソビエトから軍事侵攻を受けながらも、これまでNATOには加盟せず、軍事的に中立の立場をとってきました。しかし、今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、NATOによる集団的自衛権が必要だという世論が急速に高まった。一方、スウェーデンにいたっては1834年に、カール14世ヨーハン国王が『中立』を掲げて以来200年に渡って『もうヨーロッパの戦争には関与しない』という軍事的非同盟という立場を維持してきました。同国も今回の侵略問題を経て、アンデション首相がNATO加盟を決断したと言われていますが、実現すればまさに歴史的な一歩となるはずです」(軍事ジャーナリスト)

 また、両国が持つ陸、海、空における軍事力は、ヨーロッパの中でも最強とされ、それを使えるとなればNATOにとってもメリットとなることは間違いない。

「特にヨーロッパで最強とされるフィンランド空軍は、アメリカの最新兵器を搭載したF/A-18を所有。第5世代ステルス戦闘機である、F-35の購入も視野にいれていると伝えられます。また、地上には約1500種類の砲兵システムを持つ砲兵部隊も配備。『雪の中での戦闘では、誰もフィンランド人に勝てない』と言われるほど、冬の戦争における戦闘力の高さは折り紙つきです。NATOにとっても、この上ない大きな戦力となるはずです」(同)

 一方、スウェーデンが所有する小型ディーゼル潜水艦「ゴトランド」は、2005年の演習で、アメリカ海軍の空母ロナルド・レーガンへ秘密裏に接近することに成功。その後の模擬戦でも、駆逐艦や核攻撃型潜水艦への攻撃で、その有効性が実証されている優れモノだ。

 とはいえ、両国の加盟が実現するためには、ほかの加盟国30カ国、すべての賛成が必要。現在、難色を示すトルコとの間で話し合いが続いている。

「16日、トルコのエルドアン大統領は『スウェーデンはテロリスト組織の温床。同国議会にもテロリストが潜入している』として、2カ国の加盟を支持しないと表明しましたが、エルドアン政権は、かねてからクルド人組織を『国の体制を脅かす危険な武装勢力だ』とみなし、一方的に弾圧し続けてきました。ところが、スウェーデンやフィンランドが受け入れている難民の中に、クルド人組織のメンバーなども含まれているため、トルコは2国に対して『クルド人組織のメンバーの送還』を求めてきました。しかし、スウェーデンとフィンランドは人権問題などを背景に、これに応じなかった。また2019年、トルコがシリアに侵攻した際、両国がトルコへの武器輸出を禁止したことでも同大統領を激怒させている。結果、両国との間には大きな溝が出来てしまったんです」(同)

 そんなこともあり、武器の輸出制限については解決する糸口があるかもしれないが、クルド人問題ついては人権や主権を含め解決の答えを導き出すのは難しいとの声もあり、両国のNATO加盟もすんなりとはいかない様相だ。

(灯倫太郎)

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