約550万人の人口に対し、300万カ所のサウナが存在する北欧フィンランド。しかし、現地では臨時休業や時間短縮での営業を強いられる公共サウナが続出。その原因は深刻なエネルギー不足とそれに伴う燃料費の高騰だ。
「ヨーロッパ各国は天然ガスをロシアから輸入していましたが、ウクライナ戦争後は反ロシアの姿勢を取ったことで、供給量を大幅に減らされてしまったんです。その量は開戦前の3割程度でヨーロッパ全域を賄うには到底足りません」(エネルギー関連会社社員)
ロシアの国営ガス会社ガスプロムは、ドイツと結ぶパイプライン「ノルドストリーム1」による供給を8月31日から72時間停止。ロシア側はあくまで「点検」による一時停止としているが、延長される恐れもあり、さらに完全に供給ストップとなれば大問題だ。
「NATO加盟申請したフィンランドをはじめ、ブルガリアやデンマーク、フィンランド、オランダ、ポーランドへの別のパイプラインを使った供給はすでに止められています。この1年のヨーロッパにおけるガス卸売価格の上昇率は400%超。日本以上に深刻な状況で、これから冬にかけてさらに悪化する可能性も指摘されています」(同)
フィンランド政府は10月から大規模な省エネキャンペーンを予定しており、国民にはすでにサウナの利用自粛を呼びかけている。
「現地には薪式サウナも多いですが、実は薪の価格も世界的に高騰。天然ガス同様、こちらもロシアが一大供給国ですが、輸入再開の目途は立っていません。フィンランドも多くの外国人観光客が再び訪れるようになっており、彼らの中には本場のサウナが目当ての人もいます。特に日本ではここ数年サウナブームで年末年始を利用して旅行を計画している人も多いはず。しかし、いざ現地を訪れてもサウナはどこも休業なんて事態も十分考えられます」(同)
サウナーたちが安心して聖地巡礼するにはもう少し時間がかかりそうだ。
(トシタカマサ)