フィンランド東部国境の町は、すでにロシアが浸食?

 15日、北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請すると正式に発表したフィンランド。その前日の14日、同国のニーニスト大統領はロシアのプーチン大統領との電話会談で加盟の意向を伝えており、その際にプーチン氏は「両国の関係に悪影響を及ぼす」と語ったと報じられている。
 
 スカンジナビア半島東側に位置するフィンランドは、ロシアとは地続きで国境線は南北に約1300キロ。第二次大戦中には国土のおよそ1割を占領され、そのままソ連領とする不平等な講和条約を結ばされている。
 
「ウクライナ戦争が始まるまで2国間の人の行き来やビジネスは盛んでしたが、ソ連時代から潜在的な脅威に晒されていました。それだけに中立国の立場を放棄し、NATO加盟申請に至った今回の決断は歴史的に見ても大きな転換点となるはずです」(軍事評論家)

 今のところ、フィンランドに軍事侵攻を行う可能性は低いと見られているが、相手がロシアである以上、油断はできない。筆者は数年前にフィンランド東部にあるイマトラとラッペーンランタという2つの町を訪問。どちらもサイマー湖という大きな湖に面した美しい街だったが、街はロシア語表記の看板だらけ。地元の大型ショッピングモールは大勢のロシア人買い物客で賑わっていた。

 また、ここは別荘地としても人気があり、地元住民によれば「所有者のおよそ2割はロシア人」とのこと。ただし、当時は隣国に対して悪い印象を抱いておらず、良好な関係を維持できていると考える人が多かった。

「フィンランド東部にはロシアのおかげで成り立っている町も多く、経済制裁下でもドイツやスウェーデンと並ぶ主要貿易国でした。『経済的に浸食されている』と話す専門家もおり、多くの西側諸国よりも密接な関係なのは事実。電力やガスも今まではロシアに依存していました。それに国境から首都ヘルシンキまでは車で2〜3時間と近く、軍事的にも警戒レベルを引き上げなければなりません」(同)

 プーチン大統領が口にした“悪影響”が最悪の形で現実のものとならなければいいが…。

(トシタカマサ)

*写真はラッペーンランタの街並み

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