この方の辞書に「自己検証」という文字はあるのだろうか。
ロシアによるウクライナ侵攻が激化する中、4月21日、都内で開かれたシンポジウムで、プーチン大統領を「力の信奉者」とし、「戦国時代の武将のようなもの。織田信長に人権を守れと言っても全然通用しないのと同じ」と、痛烈に批判した安倍晋三元首相。だが、そんな安倍氏は首相時代、プーチン氏と27回も会談を重ね、「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」と語るなど、蜜月関係にあったことは周知の事実だ。
「安倍氏は、2014年のクリミア併合に際し、人権問題を理由に欧米主要国首脳がソチ五輪開会式に欠席する中、躊躇せずに出席。プーチン氏を喜ばせたことは有名な話。さらに、16年には地元の山口県・長門に招いて“おもてなし”し、3000億円の経済協力を約束。北方領土の4島返還を2島返還に妥協するなどの譲歩を見せ、結果、プーチン氏を大いに増長させてしまった。ならば、まずは自分の失策を自己検証し、反省すべきことがあればきちんと表明すべきですが、同氏には全くそんな様子が見られません。それどころか、自分の言動をすべて棚に上げたプーチン批判に、さすがに党内からも批判の声が上がっています」(全国紙政治記者)
しかも、安倍氏のこうした発言は、国内だけにとどまらず、なんと海外メディアでも発信されているというから厄介だ。
「実は、19日付の仏紙ルモンドが安倍元首相の寄稿を掲載しているのですが、これと同様の記事が、数日前には米紙ロサンゼルス・タイムズにも掲載され、チェコ共和国の国際評論サイトによってそれが世界に配信されているんです。記事の中で安倍氏は、『ロシアによるクリミア併合の際、ロシアがウクライナの主権を侵害したにもかかわらず、国際社会はこれを黙認した』として、結果、戦略的な曖昧さは通用しなくなった。したがって『中国による台湾有事の場合、米国は台湾を防衛することを明確にする必要がある』と、今回のウクライナ危機を台湾有事に重ね、米中の武力対立をあおるような発言をしています。まさに『あんたが言うか?』ということでしょう」(同)
ウクライナ戦争を機に「核共有」論を含め、「防衛費をNATO並みにすべき」等、防衛力強化について、次々に持論を打ち出し続ける安倍元首相の次なる狙いとは…。
(灯倫太郎)