ウクライナ首都近郊の焼け跡に残されていたのは、大量虐殺された市民のむごすぎる遺体だった。このまま「完全撤退」か、それとも「軍の再配置」か。ロシアの次なる戦略に注目が集まる裏で、反欧米同盟でガッチリ手を組んだプーチンと習近平は、虎視眈々と覇権争いの野望をたぎらせている─。
ロシア軍が撤退した町は変わり果て、道端には無抵抗のまま虐殺された市民の亡骸が転がっていた。
「これは地獄。人でなしを罰するために記録する必要がある」
惨劇を目の当たりにしたウクライナのベネディクトワ検事総長はフェイスブックにコメントを投稿し、ロシア軍による約5000件の戦争犯罪の捜査に着手したと報告。怒りを露わにした。
米国のブリンケン国務長官も「殺害や拷問、性的暴行など残虐行為を目的にした意図的な作戦」と記者団に語ったが、目を覆いたくなるロシア兵の残虐ぶりについて、軍事評論家の潮匡人氏はこう指摘する。
「そもそも人間は人間を殺すように作られておらず、戦闘行為自体、すさまじいストレスを感じるものですが、ロシア軍はシリア内戦でも同様の殺戮行為を平然と繰り返しています。ロシア兵の中には演習と聞かされて参加している兵士もいれば、『ワグネル』など民間軍事会社からも雇い兵が投入されている。こうなると正規軍でも何でもない。最初から使命感もなければ、金のためにやっている人殺し集団みたいなもの。起こるべくして起きた惨劇だと思います」
民間人虐殺で欧米諸国からますます非難の声が高まり、孤立化が深まるプーチン大統領(69)だが、強気の姿勢を崩していない。
ロシア国防省はウクライナの都市・ブチャで見つかった多数の遺体について、
「ロシア軍が制圧している間、1人の住民も暴力的な活動の犠牲になったことはない」
と、ウクライナ側の「フェイク画像」だと主張。さらに国民に向けて「工作活動」もしているという。外信部記者はこう明かす。
「ロシア国内で放送されているテレビ番組内で、フェイク画像の作り方を紹介していました。多くの国民は政府が提供しているものを疑っていないので、ウクライナ市民の虐殺も捏造だと本気で信じています」
自国民をコントロール下に置いた上で、「反米仲間」の盟友である中国の習近平国家主席(68)が親ロ路線を崩していないことも、プーチン大統領にとって心強いことだろう。
習主席は3月18日に米国のジョー・バイデン大統領(79)とオンライン形式で会談をした際、ロシアを支援しないよう求めたバイデン大統領の提案を一蹴、明確な態度表明を避けた。
「ウクライナで見つかった民間人の遺体に関しても、中国国営中央テレビは『ウクライナと西側がフェイクニュースをばら撒いた』と、ロシアのラブロフ外相の主張を中心に報じているほか、7日に開催された国連総会で人権理事会でのロシアの資格を停止する決議でも反対票を投じている。相変わらずロシア擁護のスタンスは崩していない」(外信部記者)
*「週刊アサヒ芸能」4月21日号より。【2】につづく