「どんな国も、隣国に対し領土要求を出せる。専門家によると、北海道の全権はロシアにある!」
ロシアのオンラインメディア「レグナム通信」が配信したロシア政界の大物、セルゲイ・ミロノフ下院副議長が発したこの暴言が波紋を広げている。
問題発言の主、ミロノフ氏は、プーチン体制下で2011年まで上院議長を務め、現在は下院第3勢力の左派系野党「公正ロシア」の党首を務める、いわば体制内野党のトップ。
「同氏が語る『専門家』がいったい誰を指すか、あるいは根拠はどこにあるのかはわかりません。ただ、これまで日本は平和条約交渉維持のため、北方領土について『不法占拠』という表現をあえて避けてきました。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、3月の会見で『不法占拠か否か』を問われた林芳正外相が『法的根拠を何ら有していないという意味で、不法なものであると考えている』と発言。3月17日の参院予算委員会では、岸田文雄首相も『不法占拠』と答弁したことで、21日、ロシア外務省は平和条約交渉について『継続するつもりはない』と中断を発表。日ロ関係が急速に悪化しました。この発言も、国内向けのプロパガンダと、対ロ制裁に対する日本への牽制と考えていいでしょう」(軍事ジャーナリスト)
現在、ロシアはカムチャツカ半島の潜水艦基地に、核兵器を搭載した弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を配備。それがオホーツク海を潜航、北方領土や千島列島などで軍事演習を行っている。
「目的はNATO(北大西洋条約機構)によるウクライナ戦争への直接介入を阻止すること。プーチンは核使用をチラつかせることで米国に対し、我々はいつ、どこからでもワシントンへ向けて核ミサイルを飛ばせるぞとプレッシャーをかけているわけです。先月30日には国後島方面でロシア軍の照明弾とみられる光が確認され、ロシア国防省は北方領土で1000人規模の軍事演習を始めたと発表しています。今後、北海道の周辺海域で、緊張が高まることは間違いありません」(同)
ミロノフ氏はまた、「どの国でも隣国に対して領有権を主張でき、国益の観点からそうする正当な理由がある。これまでクリル諸島(北方領土と千島列島)を欲しがっていたのは日本だけだった」として、「日本の政治家たちが、第2次世界大戦の教訓と関東軍の運命を、完全に忘れていないことを願っている。さもなければ我々は彼らに、その記憶を新たに呼び覚まさなければならないだろう」と、不気味な発言を繰り返しているが、
「正直、ウクライナで想定外の苦戦にあえぐロシアが即、北海道に攻め入ってくることは現実的ではありませんが、日本の近海で核を搭載した潜水艦が軍事訓練を行っていることは事実。そこでなんらかのアクションが起こらないとは限りません。いずれにせよ、今まで以上に警戒が必要でしょう」(同)
日本側の制裁に対し、「報復検討」に入ったとされるロシア。そんな中で飛び出した同氏の発言だけに、行方が気になるばかりだ。
(灯倫太郎)