岸田首相、ロシア追加制裁で電力株上昇も「原発再稼働」に市場は冷ややか

 もともと世界的な原油高で電気やガスの値上がりが懸念されていたところに、資源大国のロシアの暴挙がこれに拍車をかけ、先が見えない状況になっている。さらに加えてウクライナのブチャでのジェノサイドが明らかになると、G7諸国はロシア産の石炭の禁輸でエネルギー分野にも制裁の手をつけて、日本もこれに追随。地球温暖化の影響で毎年熱暑が続く日本の夏の電力需要がどうなるのさえ心配になってくる。

 すると岸田首相が4月8日に会見を行い、ロシアへの追加制裁を発表すると電力株が動いた。「再生可能エネルギー、原子力など脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用を図っていく」と、原発再稼働の可能性を思わせる突っ込んだ発言を行ったからだ。当然、原発関連産業のメーカー周辺はもちろんのこと、経済界全体にとっては朗報となって、投資家も期待を抱く。

「8日の金曜夕方の岸田首相の発言を受け、週明けの11日には電力株が大きく上げました。東京電力は週末との比較で一時17%も跳ね上がり、上昇率では2016年12月8日の18%以来の上げ幅となりました。中部電力、北陸電力でも8.4%、3.5%と軒並み株価を上げました。もちろん原発再稼働への期待感からです」(経済ジャーナリスト)

 西側諸国では当面、脱ロシアへのエネルギー政策を模索することになり、となれば岸田会見にもあるように、脱炭素効果の高い原発利用に大きく舵を切るほか手はない。これを好機とみた自民党の原発議連は、既に3月中にも再稼働を求める緊急決議を採択し、自民寄りの日本維新の会や今や与党気取りの国民民主の玉木雄一郎代表なども早期の再稼働の必要性を訴えている。経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)は言うまでもない。

「ただマーケット全般としては原発再稼働には冷めた見方が多い。いくら政界や財界の意向が働いたところで、手続き論的には福島原発事故後に策定された基準に適合した原発のみに再稼働を認めるということで変わりがありませんし、そこから逆算すると早くて23年末からという見方があります。日本の原発には老朽化問題もある上、東電の柏崎刈羽原発の6、7号機では21年に相次いで消火配管で手抜き溶接が見つかるという不祥事があったばかり。もちろん再稼働となれば市民も黙ってないうえ、この夏には参院選が控えていますからね。岸田さんとしては参院選が終わるまでは乱暴なことは決してできません」(同)

 岸田会見を受けて、再エネ銘柄の上昇も見られたが、こちらが話題になることはあまりない。結局、日本の電源構成の見直しについて、大きな変化はないままなのだ。

(猫間滋)

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