中国の原発で「放射性物質漏れ」の疑い G7の裏で何が起こっていたのか

 イギリスで行われていたG7サミットでは、共同宣言の中で名指しで懸念を表明された中国。そんな中国でまたまた、とんでもない問題が取りざたされている。

 中国の広東省にある台山原発で放射性物質が漏れ、周辺の放射線量が高まっているとして、この原発の建設と運転に関わるフランス企業がアメリカ政府に協力を求めた、と、13日付けの米CNNが伝えたのだ。

 CNNによれば、この企業はフランス電力(EDF)の子会社で、フラマトムという原子炉メーカー。台山原発は同社などが開発を担当し、初の第三世代型原子炉として2018年から運転をスタートさせていた。国際ジャーナリストが語る。

「事の起こりは、同社が米エネルギー省に対し『同原発と一般市民に、放射性物質に関する差し迫った脅威がある。フラマトムとして同原発を正常運転に戻すために、必要な技術支援の許可を至急要請する』という旨の書簡(6月8日付)を送ったことがきっかけです。しかも、書簡には、中国が引き上げた放射線量の許容限度はフランスの基準を超えているとの記述があり、これは、中国当局が原発の運転停止を避けるため周辺の放射線量の安全基準を緩和しているのだと…。実際に原発の運転に携わる企業の訴えだけに、すわ、放射能漏れでは!と関係各所に衝撃が走ったというわけです」

 CNNの報道を受け、13日夜には台山原発を運営する国有の中国広核集団が「同原発とその周辺の環境指標は正常」とする声明を発表。しかし、事故発生の有無については言及せず、「原発は核安全規制と原発の技術仕様の必要条件を満たしている」との説明に終始したことで、欧米の専門家たちの間からは「何がどう安全なのかを具体的に説明し、疑念を取り除くことが必要なのでは」という声が上がっている。

 前出のジャーナリストが続ける。

「フラマトムが提出した書簡の中には、台山原発内で希ガスの濃度が高まっているとの報告を受けた、との記述がありますが、希ガスというのは化学反応性の低い元素で、今回発生したのはキセノンとクリプトンという元素だとみられています。つまり、一部の燃料棒のコーティングが劣化したことでこういったガスが漏れ出した可能性があるというわけですが、原発側の広報担当者によれば、すでにガスは回収され、放射能を除去する処理をした上で放出されたといい、これは『規定に従った通常の措置』だったと。現時点では周辺に具体的な変化は見られないものの、なにせ放射能は目に見えないものですからね。今後の推移を見守るしかありません」

 1986年に起こったチェルノブイリ原発事故でも、当初、ソ連当局は爆発による死亡者はあったものの、事故現場の放射線量には問題なしとして、周辺住民に避難通知を出さず、避難を呼び掛けたのは、事故発生から1日半が経過した後。結果、その後になって、放射線被ばくが原因で何千人もの人々が命を落としたことは周知の事実だ。

 そんな中、台山原発では大規模な点検を経たあと、「2基の原子炉の運転データはいずれも、原子力安全規則と技術面の要件を満たしている」として10日から運転を再開している。

 今回ばかりは中国側の主張が間違いでないことを祈りたいものだが……。

(灯倫太郎)

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