〈水でカップ麺作りに挑戦!冷やしラーメンみたいでありだよ、あり!〉。これは今話題となっている、警視庁警備部・災害対策課のツイートの一部。公的機関らしくない身近な言い方で、今やフォロワー87万人を超える人気ぶりだ。そこでツイートの中から厳選した「防災裏ワザ」を実践してみたところ─。
警視庁警備部・災害対策課とは「災害警備」と「地域防災」の2本柱で活動している部署だ。今年で10年の節目を迎えた東日本大震災をきっかけに情報発信の重要性に注目し、15年に公式アカウントを開設した。非常食の美味しい食べ方から、ペットボトルを使った節水方法、5円玉でトゲを抜く技など、日頃から災害時に知っておくと役に立つ「防災裏ワザ」の発信に力を入れている。
災害・防災情報に詳しいジャーナリストの村上和巳氏に、裏ワザの実用性を踏まえて5段階評価で採点してもらおう。
■水でもカップ麺を美味しく作れる(実用度☆☆☆)
作り方は簡単。お湯の代わりに水を入れて15分待つだけだ。停電時などで電気、ガスが使えないケースを想定している。
記者は「日清カップヌードル」のカレー味、醬油味、シーフード味、「日清のどん兵衛」天ぷらそば、「日清焼そばU.F.O.」の5種類のカップ麺を水で作ってみた。待つこと15分‥‥。いざ実食!
まずはシーフード味から麺をすする。んん!?
美味しい! 麺は少し固いが、これはまさしく冷やしラーメン。しかし、シーフード味以外の麺はうす味すぎて、どこか物足りない気がする。焼きそばに関しては15分では固すぎて食べられず、結局45分ほど待つことになった。
なお、時間が経つほどにカップ麺の味は濃くなる傾向があり、そばやカレー味、醬油味は30分くらい経った方が美味しく食べられるという結果に。村上氏が解説する。
「元々、お湯で作られることを前提にしていますから、水で作ることで最低でも5倍の時間はかかると思っていいでしょう。大切なのは、あらかじめ水で作って食べてみて、時間や味を知っておくことです」
■電気やガスを使わずにパックご飯をホカホカに温められる(実用度☆)
警視庁のツイートによれば、パックご飯の上下に温めたカイロを置き、上からタオルとアルミシートで包み込んでおけば1時間後には温かくなっているというものだが、実験の結果はほとんど変化なし。やや芯のある冷や飯を食べている気分だ。自宅にカイロを備蓄している人も少ないことから、実用性は低い結果に。
■アルファ化米+野菜ジュース+粉チーズでトマトリゾットになる(実用度☆☆)
続いては、水を加えるだけで食べられる非常食「アルファ化米」をさらに美味しくする裏ワザを。作り方は、水やお湯の代わりに野菜ジュースを入れて1時間待つだけ。編集部では、野菜ジュースの他にトマトジュース、コーヒー(無糖・加糖)、リンゴジュース、お茶を使って試してみた。
トマトジュースはケチャップライスに近い味となり、さらに粉チーズを入れておけば美味に。また、意外にも、お茶で作ったアルファ化米は炊き込みご飯のような風味でイケるではないか。コーヒーとリンゴジュースは、ご飯に砂糖をかけたような甘い味となり、好みが激しく分かれそうだ。
■ツナ缶が即席ランプに早変わり(実用度☆☆☆)
こちらは警視庁のツイートの中でも特に反響を呼んだライフハック。ツナ缶に穴を開けて、綿のひもやコーヒーフィルターなどを差し込み、火をつけるとランプになるというもの。ツナ缶油を利用することで、2時間ほど火がついたままで、中身も食べられる。
ツナ缶にドライバーを使って穴を開ける作業に少し手こずったが、炎の勢いはしっかりしており、即席ランプの完成。村上氏によると、
「ツナ缶を常備している家庭は比較的多いかと思いますが、綿のひもやコーヒーフィルターがあるかどうかは微妙。それを考えると、実用性はそこそこ」
■缶切りを使わなくても缶詰を開けられる(実用度☆☆☆☆☆)
最後は最も評価の高い結果となった裏ワザだ。プルトップ型ではない缶詰を、コンクリートに円を描くように押し付けるだけで簡単に開けられるというもの。
そんなはずがあるのか、と疑念を持ちつつも実践してみると、ものの1分ほどで中の汁が出てきたではないか! そして開始3分後には蓋が開くという結果に。
「缶詰の造りは意外と簡単で、接着部分が取れれば開けることができます。万が一、缶切りがない場合でもこの方法を知っておけば開けることができるので、知っておいていい知識です」(村上氏)
警視庁の防災裏ワザを紹介したが、村上氏はこれ以外にも災害時に備蓄しておいた方がいい物を挙げて締めくくる。
「警視庁がツイートする防災ライフハックは、災害時に自宅で被災生活をしていて、ライフラインが機能しない状況であることを仮定しているものが多いです。それで言うと、カセットコンロとガスボンベを用意しておくといいですね。東日本大震災の時には、ライフラインが復旧するのに1週間から10日間かかりました。その間、もし自宅で過ごすとなれば、6本入りのガスボンベを4セット用意しておくといいでしょう。その量で夫婦2人と子供1人くらいが生活することができます」
いつ起きるかわからない大地震に備えて、日頃から防災意識を高めておくのが大切なようだ。
「週刊アサヒ芸能」4月1日号より