近著に「ホームレス消滅」(幻冬舎新書)があるライター兼イラストレーターの村田らむ氏は富士の樹海や特殊清掃の現場など、危険な潜入取材を続けてきた。怪しい宗教団体が乱立していた頃、村田氏が参加したのは世界的にも知られた“性教団”。その「夏合宿」で見たものとは……!?
20年ほど前「宇宙人を神様として信仰する、性教団」に取材のために潜入した。その団体は、クローン人間を作ることにも賛成で、自分たちで研究しているとも発表していた。
こう書くと、かなり過激な宗教団体っぽいが、そこまで反社会的な団体ではなく、今も存続している。
入会の儀式では、外国人の教祖におでこに塩水で濡れた手を当ててもらう。それだけだった。
「手を当てることで、あなたの遺伝子情報や記憶情報などを読み取り、そのデーターを宇宙にいる宇宙人の母船に送った。もしあなたが死んでも、宇宙船の中で復活できる」
と説明された。
すさまじくインチキ臭いし、百歩譲って本当だったとしても、宇宙船の中で復活した人物は、自分とよく似た他人じゃないのか? という気がする。
教団の最大のイベントは、夏合宿だった。夏場の空いているスキー場の大きなホテルを貸し切って行われていた。
全国から集まった信者数は400人強、教祖もずっと滞在していたし、海外の信者の人たちもたくさん来日していた。
初日に24時間断食した後(食事だけでなく信者同士の会話も禁止)、食事も会話もそして性的行為も開放される。
そして教祖の最初の掛け声は、
「オールウェイズ!! オールウェイズ!! オールウェイズ!! コン××ム!!!!」
だった。
性的行為は男女間でも同性間でもオーケー。異性を独占する権利はないので、基本的に誰と交わるのも自由だ(ただし、どんな時も避妊は絶対だ!!)。
お風呂は混浴で、夜中、地下ルームではダンスパーティーが繰り広げられ、“マッパ”に近い格好で踊っている。モーニング娘。の『LOVEマシーン』が繰り返し大音量でかかるこの上なくダサいダンパだったが、バストをほうりだして踊っている女性がいるわけだから艶っぽいムードはただよっている。ただその場で性的行為をしているというわけではない。
相手との合意は絶対なのだ。誘われても断る権利はある。つまり、卑猥な営みをするには普通に異性を口説かなければならないのだ。
男女で意気投合してもその場ではやらず、ホテルの自室や、貸し切りのカラオケルームの個室でしたり、わざわざ自動車で近くのホテルまで行ってする。
とにかく外国人がモテていた。整った顔の韓国人や、優しい笑顔の白人黒人はモテるモテる。日本人でもジャニーズのようなかわいい顔立ちの男子はモテるし、また教団内で権力を持っている人もモテる。
モテる奴はばんばん性的行為ができて、モテない奴は部屋でシーツを噛んで泣くしかない。……つまり、日常とあまり変わらないのだ。一番安い雑魚部屋コースで参加してる、ブサイクで、なんの取り柄もない信者たちは全然モテず、女性にもありつけない。
当然、筆者もそのモテない軍団にふくまれた。日常と変わらないと書いたが、身近でいちゃつき性的行為を見せつけられるのだから、ストレスはすごい。
ダンパで女性に声をかけるたびに、けんもほろろに断られ続けたブサイクな男子が、ついに切れてしまった。
「この宗教に入ったらデキるって言ってたじゃないか!! 嘘つき!!」
と大声で怒鳴った。しばらく場内は凍りついた。
この宗教内で一番の勝ち組は、UFOオタクのおじさんたちだったかもしれない。性的な営みには興味がなく、部屋でずっと同趣味のおじさん同士で、
「ミステリーサークルがうんぬん」
「葉巻型宇宙船がうんぬん」
と会話に花を咲かせていた。
卑猥な営みをするために新興宗教に入るなら、吉原のピンク店に行くほうがはるかに楽なんだな、と学んだのであった。
(村田らむ)
※写真はイメージです