公園にも河川敷にも住めない!コロナ禍で急増するホームレスの行き先は?

「今もホームレス支援のため、都内各地で炊き出しが行われていますが、最近はあまり場慣れしていない40代、50代の方たちを見かけるようになりました。まだホームレスではないものの、一歩手前で踏みとどまっている。そんな印象を抱きました」

 こう語るのは、「ホームレス消滅」(幻冬舎新書)の著者で、ホームレス取材歴20年以上というライターの村田らむ氏。コロナショックで仕事を失い、貯金も尽き果て家賃も払えずに路上生活者へ…。そんな“コロナホームレス”が今後は増えていくかもしれない。

 だが、社会に目を向ければホームレスの“居場所”は失われつつあるのが現実だ。

「都内のホームレスの締め出しといえば、もっとも顕著なのは公園。1990年代の終わり、建設業界や製造業の不況によって多くの中高年の労働者が職を失い、路上へとはじき出されました。1998年の調査では、東京23区の路上生活者の6割以上が公園在住だったことが明らかになっています。かつて上野公園や新宿中央公園には、小屋やテントが建ち並んでいましたが、公園の管理体制や警察の介入などもあって、徐々に姿を消していきました。東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった頃には、そうした“見えるホームレス”はほぼ“浄化”されたと言ってもいい状態でした」(村田氏)

 また、多くのホームレスが“定住”していた河川敷も、もはや安心して暮らせる環境ではないとの指摘もある。

「多摩川の河川敷では、立派な小屋を建てて、畑を耕すなどして自由気ままに暮らすホームレスが大勢いました。ところが昨年秋の巨大台風では、河川の水位が橋桁のすぐ下まで上がって、河川敷は完全に水没。水が引いてから避難していたホームレスが徐々に居を構え始めていましたが、またゼロから住環境を整えなければならず、これに心が折れたのか、およそ3分の1の“元住民”は別の場所へ移ったと見られています」(村田氏)

 九州の豪雨災害では河川の氾濫で、周囲の住宅1万棟以上が浸水被害に見舞われた。

「東京でも、こうした災害の被害を食い止めようと、川底を深くして川幅を広くする工事計画が進められていると聞きます。こうなると、ホームレスが暮らす河川敷はどんどんなくなっていくでしょう。彼らがどこに行くかといえば、自治体の福祉職員があっせんするアパートや施設。そこで生活保護を受け取って暮らすことになりますが、なかには酒やタバコを禁止するなど厳しいルールを課す施設もあり、再び路上生活に戻る人たちもいるようです」(村田氏)

 ホームレスと行政のいたちごっこはコロナ禍が収束した後も続きそうだ。

(編集部)

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