ホームレス取材歴20年の識者が明かす「路上から物乞いが消えた理由」

 話題の新刊「ホームレス消滅」(幻冬舎新書)で、20年以上におよぶホームレス取材の成果をまとめた著者の村田らむ氏。コロナ禍において経済不安がさけばれるなか、ホームレスのリアルな実態をリポートする。

 海外旅行をすると、道端で物乞いをしている人たちをよく見かける。

 韓国のソウルでは足に障害がある人が路上で物乞いをしているのを見つけた。現地の人に話を聞くと、健常者がわざわざ障害があるふりをして物乞いをしていることもよくあるという。つまり“偽装障害”だ。わざわざウソをついてまで物乞いをするということは、儲かるということだろう。

 実は、僕はかつてサブカル雑誌の企画で、路上で物乞いをしたことがある。ゴザの上で正座をして目の前に空き缶を置いただけなのだが、サラリーマンやセーラー服の学生さんなどが次々にお金を入れてくれた。なんと一日で3000円ほどになった。

 ホームレスの多くが生業にしているアルミ缶回収は、どんなにがんばっても1日3000円が限界だという。

 ただ座ってるだけと、一日中歩き回るのと、稼げる額が同じなら、物乞いをしたほうが楽なのではないだろうか?

 ホームレスのお父さんに話を聞くと、

「野宿生活をしてたって、プライドはあるからね。物乞いなんかできないって人は多いよ。俺だってしたくない。ただプライドがない人だって物乞いはなかなかできないんだよ。物乞いには、警察が結構うるさいんだよ」

 警察も細かいことをいちいち注意するなあと思うが、これには根拠がある。物乞いをする人は、軽犯罪法第1条22号の「こじきをし、又はこじきをさせた者」にあたる。該当する人は、拘留又は科料に処する、とされている。

 つまり、物乞いは犯罪なのだ。

 軽犯罪法の罰則は「1日以上30日未満の身柄拘束」または「1000円以上1万円未満の金銭徴収」だ。物乞いをしていても、すぐに警察官に逮捕されるということはまずないが、犯罪は犯罪なのだから注意されるのは仕方ないだろう。

 ちなみに軽犯罪法第1条4号には「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」も拘留又は科料に処すると書いてある。

 これは、解釈によってはホームレスの存在そのものが犯罪だと言っているようなものだ。 

 社会からはみ出した者、ドロップアウトした者を犯罪者だとするのは強い抵抗を感じる。

「自分には関係ないことだ」

 こう思うかもしれないが、誰だって野宿生活をせざるをえない立場に陥ることはありえるのだ。

(写真・文/村田らむ)

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