関東地方にあるK刑務所といえば、汚職で有罪判決を受けた政治家、会社の金をギャンブルにつぎ込んだ元実業家ら、これまで多くの有名人が収監されてきた。
つい先日に同刑務所を出所したAさんが“有名受刑者”の素顔を明かす。
「大手建設会社から大金を騙し取った地面師グループの一員はろ紙巻き工場に服役しています。懲役年数も長い。トイレの芳香剤の白い部分はろ紙なのですが、それをプラスチックの部品に巻く作業ですね」
複数の男女が土地の所有者や仲介者を騙って、大企業から何十億円もの金を詐取した事件は記憶に新しい。ところが、その犯行メンバーの一人は、ある素行から他の受刑者から煙たがられていたという。
「動きがトロいんです。工場では出入りごとに、点呼があり、全員が整列して、衛生係から順番に番号を言わなければなりません。それが彼のときに必ず詰まるんですよ。もっとも、『7』を『なな』ではなく『しち』、『9』を『きゅう』ではなくて『く』と言わなければいけません。それに50番を超えるとまた1番から言わなければならないという決まりごとがあって、間違えるとまた最初から言うことになるので、彼が何度も間違えると方々から舌打ちが聞こえてきましたよ」(Aさん、以下同)
なぜかVIP待遇されているのが、有名ラッパーのDだという。CDデビューを果たし、バラエティ番組にも出演する売れっ子となったが、何度も薬物犯罪を起こして2019年に実刑判決が確定。そのⅮがまさかK刑務所に収監されていたとは…。
「Dは高学歴の者しか入れない図書工場に選ばれています。過去、同じクラスのラッパーは一般工場だっただけに不思議がられています。彼が新入訓練工場のときに、同期の若いヤツがちょっとからかって喧嘩を売ろうとしただけで刑務官が7、8人すっ飛んできてガードしたとか。そんなVIPは一部の政治家センセイくらいだったので不思議がられていましたね」
そこで浮上したのが“密告疑惑”だ。
「彼が逮捕されてから、大物女優のSやミュージシャンで俳優のPが相次いで逮捕されたので、ひょっとしたら情報と引き換えにVIPになったんじゃないのか…なんて良からぬ噂を立てられていました。大きな事件の解決につながった情報提供者はその見返りとして優遇される傾向があるだけになおさらです。所内ではDのことを手紙に書くことは禁止となっているなど、秘密保持も徹底されています。もっとも、本人は中途半端なタトゥーを入れた太った体を揺らしながらいつもニコニコとしており、相手のご機嫌を常に伺って行動するなど、自伝で書いてあるような不良像とはほど遠く、人柄の良さからベテラン受刑者からも可愛がられていました。過去のラッパーは反逆児が多かっただけに意外でしたが、あの調子なら、1年以上の仮釈放がついてもおかしくありません」
政治家や俳優が入所するたびに、その噂は塀の中をかけめぐり、格好の話のネタになるという。ある意味、ストレスのはけ口にもなるため、K刑務所の受刑者は他にくらべて少しは恵まれた環境にいるかもしれない。
(月見文哉)