巨人・吉川大幾がスコアラーに転身!変わる再雇用事情とトライアウトの意義

 巨人から戦力外通告を受けていた吉川大幾内野手(28)が、球団職員となることが発表された。来年からはスコアラーとしてチームを支えていくそうだが、吉川は12球団合同トライアウトを受けている。ひと昔前、トライアウトを受験する選手には「裏方として、所属球団の再雇用の話を捨てた」、「退路を断って現役続行の可能性にかけた」といった悲壮感も漂っていた。しかし、選手、球団ともに考え方を変えてきたようだ。

「絶対に現役生活を続けるんだと必死になっている選手もいますが、『引退試合』のようにトライアウトを捉えている選手も少なくありません。家族を連れてきて、最後に写真を撮る選手もいます」(取材記者)

 吉川は再起を目指した側の一人であったはず。だが、トライアウト終了から時間が経つにつれ、冷静に今後のことを考えるようになったのだろう。野球に携わって生きていけることを幸せと思い、その道を選択したのかもしれない。

「巨人を例に挙げれば、松本哲也、山口鉄也の両氏は戦力外通達をされ、少し時間が経過してから球団職員の話を受けました」(前出・取材記者)

 松本、山口両氏は幼児と小学生を対象とした「ジャイアンツアカデミー」の指導者を経て、ファームのコーチに就任した。球団も「現役が終わったらサヨウナラ」ではなく、チーム功労者、マジメにやってきた選手に対し、なんとかしてやりたいと捉えるようになった。また、先のアカデミーや三軍制が始まったことで指導者が不足し、球団内に元選手が活躍できる場所も増えてきたようだ。

「かつては事務的にクビを宣告するだけでしたが、とくにベテランに対しては他球団の評価も聞かせ、自ら引退を表明できる機会も用意するようになりました」(スポーツ紙記者)

 逆を言えば、ベテランがチームを去って他球団で再起を目指すということは、十分な話し合いができていなかったという見方もできる。

「ドラフトの影響もあります。下位、育成で指名した高校生とその指導者、両親からすれば、その後のセカンドキャリアも気がかりなはず。チームに貢献した選手には、しっかりとセカンドキャリアの相談にも乗っているとわかれば、入団交渉でもめなくて済みますから」(関係者)

 若手の育成の場でもあるフェニックスリーグで、セカンドキャリアに関するアンケートがNPBにより行われてきた。「やりたい職業」について、19年の結果は「起業」が1位となり(21.4%)、一般企業への就職も13.5%と高い数値を示している。選手も競技者生活の終了を冷静に受け止めているようだ。悲壮感のない引退劇が定着しつつある。

(スポーツライター・飯山満)

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