コロナ禍で激変した慰問コンサート「刑務所のアイドルもオンラインで…」

 24時間365日、塀の中で厳しい規律に縛られた生活を送る受刑者たち。そんな状況下で享受できる娯楽らしい娯楽といえば有名人の「慰問」。杉良太郎はそれをライフワークにしているが、これまでにEXILEのATSUSHIや石田純一、貴乃花親方といった面々が法務省矯正支援官に任命され、刑務所をボランティアで訪れて受刑者たちを激励してきた。

「有名人の慰問はだいたい1週間ほど前に受刑者たちに告知されます。矯正指導のなかでNHKの教育番組を見せられるのですが、このビデオ学習で、突如として画面が切り替わって有名人のビデオが流れ、そこで1週間後の訪問を知るわけです。生で有名人が見れるというワクワク感で、胸が踊る日が続き、雑居(房)ではその話題で持ち切り。それが女性タレントともなれば、夜の格好のネタとなるのでより高揚感に溢れ、いつもの退屈な刑務作業もまったく苦に感じなくなるんです」

 こう話すのは、今年1月まで北関東某所の刑務所に服役していたというAさん。慰問といえば堅苦しい「講演」や「演歌」と思われがちだが、その慰問回数の多さもあって刑務所人気ナンバーワンを誇るのが女性デュオのぺぺ(Paix2)だ。窃盗犯罪と服役を繰り返してきた高齢者の元受刑者Bさんはこう話す。

「刑務所に入って、唯一の希望がペペに会えること。シャバにいるときは全然知らなかったけど、刑務所といえばぺぺというくらい、アイドルとして認知されていますよ。オヤジ(刑務官)たちも、『刑務所に来たんだからぺぺは見とかなきゃな』と言うのがお決まりになっています。毎年、塀の中ではぺぺに送る創作詩を募集しているのですが、その応募数も相当数あります。私も作って応募しました。シャバに残した婆さんを思って歌詞をしたためたのですが、惜しくも落選してしまいました」

 メンバーのマナミとメグミはいずれも鳥取県出身。2020年には500回目となる「プリズンコンサート」を横浜刑務所で成功させて話題となった。その実績から、超ベテランの大御所ミュージシャンと思われがちだが、その若さあふれるルックスに驚く受刑者は多い。若かりし頃のWinkに似ていると評判なのだ。

 しかし昨今のコロナ禍でペペも慰問活動の自粛を余儀なくされている。

「今はぺぺのオンラインライブがテレビで見られるんですよ。実際に慰問に来たら、ただっ広い体育館で見ることになるので、ステージから遠すぎてぺぺの2人の顔をまともに拝めなかったかもしれません。テレビでぺぺの2人の顔をしっかりと見ることができました。それに慰問コンサートでは、曲に合わせて手拍子は許されるけど、歓声を上げるのはNG。違反したら懲罰になるので、ぜんぜん盛り上がれないんですよ。でもオンラインなら、声援を送ったり一緒に歌を口ずさんだりすることも許されました。オンラインライブの日は、あちこちの部屋から歓声が上がっていました」(Aさん)

 ぺぺは今も全国の受刑者をオンラインライブで励まし続けている。リモートであっても、その影響力は計り知れない。

「やっぱりペペは歌もトークも“ムショ仕様”になっているので、誰でも一発でファンになってしまいますね。目線が私たちに近いというか…。それで慰問ライブのあとは『どっちが可愛いか』『付き合うならどっちがいいか』『神聖なペペを汚すな』などと論争になって、しばしば喧嘩が起こることも…。これも“刑務所あるある”ですね」(Bさん)

 塀の中のニューノーマルとなりそうだ。

(月見文哉)

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