5月1日、国民に一律10万円を支給する「特別定額給付金」のオンライン申請受付が一部の自治体でスタートした。郵送での申し込みもできるが、オンラインの申請サイトにはアクセスが殺到し、《なかなかつながらない》《サーバーがダウンしている》といった苦情が寄せられているようだ。
自治体によってバラつきはあるものの、5月7日の支給を目指すと発表する自治体も見られた。この「一律10万円」の給付対象者について、総務省は「特別定額給付金の概要」として以下の条件を掲示している。
・給付対象者は、基準日(令和2年4月27日)において、住民基本台帳に記録されている者
・受給権者は、その者の属する世帯の世帯主
「受給資格について、政府のコールセンターには問い合わせが殺到し、なかなかつながらない状態が続いています。基準日の4月27日に生まれた赤ちゃんは対象者になるのに、4月28日に生まれた赤ちゃんは対象外なのか、また、4月27日に亡くなった人の分はどうするか、などなど不明点な部分が多いのは事実です」(社会部記者)
そんな大混乱のなかで“歓喜”に包まれていたのが刑務所だ。関東近郊の刑務所に服役中のAさんの手紙にはこう書かれていた。
《みんな今はコロナウイルスよりもこの10万円のことで頭がいっぱいです》
《刑務所内のいちばんの話題は10万円の配布です。一種、フィーバーになっていると言っても過言ではありません。みな口に出せば「10万円」と目を輝かせています》
罪をおかして塀の中で暮らす受刑者に「10万円」を受け取る資格はあるのだろうか。検証する前に、もう少し塀の中の現状についてリポートしたい。
Aさんによれば、《刑務所の中での10万円はシャバの100万円に相当》するほどの大金で、受刑者たちは今から「何を買おうか」という話題で盛り上がっているという。
手紙の中で挙げられたのは「シャンプー」「ちり紙(高級)」「フカキョンの写真集」といった品々だった。しかし塀の中でフカキョンの写真集を購入することは可能なのだろうか。
刑務所事情に詳しく、「刑務所で泣くヤツ、笑うヤツ」(河出書房新社)などの著書がある作家の影野臣直氏が語る。
「刑務所内で購入できる物品には各種の制約が設けられています。衣類に関しては、アンダーウェアならどこそこのメーカーといった具合に、刑務所が指定した物品しか購入できません。しかし本となると話は別。図書係の人間に出版社名などを記した注文書を渡せば、早くて1カ月後には手元に届くことになります。もちろん、アイドルや女優の写真集を購入することもできます」
しかし最大の懸念事項は、刑務所にいる受刑者が、今回の「特別定額給付金」を受け取ることができるのかどうか。
「受刑者には選挙権も公民権もありません。また納税の義務もないので支給対象外になるのではないでしょうか」(前出・影野氏)
だが、現役受刑者Aさんは、「10万円」への過剰とも言える期待の高まりから、
《囚人には10万円支給されませんよ、となったら…ヤバい状態になると思います。累犯刑務所だと暴動が起きるのでは? とも思います》と刑務所内の治安悪化を案じているようだった。
「リーマンショック後の2009年には緊急経済対策の一環として1万2000円の定額給付金を国民に配布しました。この際には2月1日を基準日として、同日に生まれた新生児も支給対象となりました。住民基本台帳に記載されていない不法滞在の外国人は当然、支給されませんでしたが、2月1日より以前に刑務所から出所した“元受刑者”はもちろん、塀の中にいる現役の受刑者にも受給資格が認められたケースがあったようです」(前出・社会部記者)
安倍政権は刑務所の中にも10万円をバラまくおつもりなのだろうか。受刑者の受給資格について、総務省のコールセンターに問い合わせようとしたが、何度かけてもつながらなかった。
(編集部)