世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「残すならサンズよりボーアやろ!」

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 いつものことながら「バースの再来」とは、ならんかった。阪神のボーアが10月22日に出場選手登録を抹消された。故障したわけではないけど、前日にマルテが2軍から昇格してきて、1軍にはサンズを含めて外国人野手が3人となった。矢野監督とすれば「ボーアは別におらんでもいい」という判断やと思う。大リーグで92本塁打の実績を持ち、推定年俸2億7500万円で獲得した期待の助っ人やったけど、寂しい幕切れとなりそうや。

 来日1年目の成績は99試合で打率2割4分3厘、17本塁打、45打点。特別悪いわけではないけど、年俸に見合った活躍ではなかった。キャンプではフリー打撃でサク越えを連発して、マスコミがファンの期待をあおりすぎた面もある。矢野監督も開幕から「4番一塁」で起用したけど、18打席連続ノーヒット。3戦目からは6番に降格となった。練習の緩い球は打てても、試合になるとまったく別物やから。バットに当たりさえすれば規格外の飛距離が出るけど、当たらんことにはどうしようもない。

 ちょっとバットが下から出てくるタイプのスイングやから、内角高めの速いストレートが打てなかった。ここを意識させられて、外に変化球を落とされるというお決まりの配球に苦しんだ。開幕前から不安視されていた対左投手も、打率2割1分9厘の厳しい結果に終わった。今年は特殊なシーズンで、開幕からの不調は調整の難しさもあったと思う。反省を生かせば、2年目は上がり目もある。それでも、3割40発とかいうのは現実的ではなく、2割6~7分、25~30発ぐらいと違うかな。

 その程度の数字なら、やっぱり今の年俸では契約更新は厳しい。50%ダウンでやってくれるなら、残しておいたほうがいいと思う。今年は米球界の3Aのシーズンが中止となって、例年なら日本に来るような選手の調子がまったくわからない。各球団とも条件は同じやけど、新外国人の補強は苦労することになる。

 もうひとりの1年目の助っ人のサンズは、報道によると残留が決定的だという。こちらのほうは開幕は2軍スタートで期待されていなかったけど、マルテの故障で昇格すると、韓国で打点王となった勝負強い打撃を発揮。8月中旬からは4番を任され、一時は打率も3割を上回り、大山とともにホームラン王争いを演じた。推定年俸が1億2100万円で、給料に見合った成績は残している。ただ、来年の上がり目となると、期待しすぎないほうがいい。変化球には強いけど、ボーア以上に内角に弱点がある。10月以降の打率は1割台。これを疲れとみるか、相手に研究された結果とみるかやな。

 いずれにせよ、阪神は外国人頼みのチーム強化から卒業するべきや。同時に世代交代もうまくやらないといけない。先日は43歳のベテラン福留が今季限りで退団することが報道された。投手陣でも藤川、能見が去ることになり、チームは過渡期にある。

 大山という4番をもっと大きく育てないといけないし、高卒ルーキーの井上はお試しで起用されて、大物感を見せつけた。粗削りやけど、しっかりバットは振れていた。来年は開幕から外野でのスタメン出場を目指さないといけない。「バースの再来」など期待しなくていい。骨太の打線でファンを喜ばせてほしい。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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