世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「岡田阪神は全てがガラリと変わる」

 阪神の新監督は岡田彰布の再登板で決着した。球団からは監督人事の報道自粛のお達しがあったけど、某スポーツ紙が「出禁覚悟」でシーズン中に報じて明るみに出た。平田2軍監督の内部昇格と天秤にかけられた末、2008年以来の岡田の監督復帰。親会社の「阪急阪神HD」の阪急サイドの意向が働いたとも聞く。岡田監督になって、どう変わるのか。戦力的に考えると、優勝争いに絡むのは間違いない。

 そもそも今年も普通に戦えていれば、優勝に一番近いチームやった。開幕9連敗を喫して1勝15敗1分の逆噴射スタート。最終的に借金3で終わったけど、投手陣の駒は12球団で一番そろっていた。確かに打力は強いとは言えないが、そんな簡単に負けるチームではない。今考えても開幕からの歴史的な出遅れが不思議で仕方がない。矢野監督自身は関連づけられたくないだろうけど、どうしても「あの発言」がなかったらと考えてしまう。

 キャンプ前の1月31日の矢野監督の今季限りでの退任表明は、僕の感覚では理解できなかった。捕手出身の監督はしたたかな面があるから深い狙いがあったのかもしれない。でも、選手やコーチもキツネにつままれた感じがあったと思う。

「なんでやろ」とモヤモヤした気持ちをどこかで抱えながら開幕を迎えたことが、あの泥沼連敗の一因と言われても仕方がない。

 それでも投手陣を中心によく立て直して3位に入ったと思う。CSの第1ステージでは今季からセットアッパーに抜擢した湯浅を抑えに回して、DeNAを2勝1敗で下した。シーズン中よりも積極的に代打策や機動力を使えていた。ただ、やはりリーグ最多失策の守備のまずさは相変わらずやった。本来、内野手の大山はシーズン中に左翼に回ったりしていたが、CSでは右翼も守った。そら、エラーもしてしまう。ただでさえ、4番打者として集中したい大舞台で、不慣れなポジションを守らされて気の毒やった。

 岡田監督が就任したら、本人がシーズン中の解説でも疑問を投げかけていただけに、守備のたらい回しはやめるはず。特に大山、佐藤輝、近本の主力3人はきっちり守備を固定すると思う。注目したいのは、失策の多かった遊撃の中野を含め、二遊間をどうするか。正捕手を誰にするのか。攻撃よりも守備を重視した人選も考えられる。まずはセンターラインの構築から岡田阪神はスタートするのと違うかな。

 岡田監督時代の2005年の優勝時は、JFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川、久保田)と呼ばれた鉄壁リリーフ陣が大活躍した。7、8、9回の野球から考えて、先発、リリーフの配置転換も模索すると思う。湯浅だけでなく、今年は先発で起用された西純矢や森木ら、球の速い若い投手をたくさん抱えている。FA権利を獲得した西勇輝や、ポスティングでメジャー挑戦の希望を明かした藤浪の去就は不透明やけど、たとえ2人が抜けたとしても、他球団以上の投手力がある。

 間違いなく言えることは、練習も厳しくなるし、チームの雰囲気もガラリと変わる。矢野阪神は、明るく楽しくという感じやったけど、勝負に不必要な笑顔はなくなると思う。でも結局、監督が誰になろうとプレーするのは選手。ピリッとしたムードの中で、チームがどう生まれ変わるか見ていきたい。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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