合宿免許は除外でワーケーションは!? GoToトラベル“新基準”に戸惑いの声

 トリキの“無限ループ”に続いて“無限くら寿司”。制度上の問題はないが、釈然としない思いを抱く人は多いのではないだろうか。

「くら寿司のような大手チェーンばかりに客が集中するシステムや恩恵の偏りに個人経営の飲食店などから不満が上がっています」(全国紙記者)

 というように、トラベルやイートの一連の「GoTo」事業の一貫しない制度が問題視されている。それだけではない。制度がスタートしたものの、何かしらの偏りが見つかれば意図的に制度が変更されて今度は一転、恩恵の対象から外される“はしご外し”に遭うというのだから当事者としてはたまらない。

 7月22日から始まったGoToトラベルでは、コロナ感染者が多かった東京が外されたのは今さら言うまでもないが、推進の当事者の菅義偉・官房長官(当時)が「東京問題」と切って捨て、対する小池百合子・都知事はコロナ対策を冷房、GoTo事業を暖房に例えて「(両方を一度にかけることに)それは国が『よーく』ご判断されたことなんだろうと思います」と皮肉たっぷりにコメントして、“盛大なはしご外し”と例えられた。

 そしてまた、飽くことなく繰り返されている。

「10月13日に政府は楽天やじゃらん、ヤフーなどの大手ネット旅行業者へのGoToトラベルでの給付金枠を増加する決定をしました。安倍政権時代にはJTBや近畿日本ツーリストなど、旧来の大手旅行代理店に多く配分されていた給付金ですが、実際にはネット業者への申し込みが殺到したためにタネ銭が切れてしまったからです。だから官邸は増額に踏み切ったんですが、経産省が主導していると言われるGoTo事業で、水際で業者を所管する観光庁を素通りした決定が下されたことで、国交省はまさしくはしごを外された格好で、観光庁のマインドはダダ下がりです」(前出・全国紙記者)

 そして今度は10月24日に、車の「合宿免許」のツアーをGoTo事業から除外するとし、さらに30日には「観光を主な目的としない旅行」についても除外するとの方針が示された。観光を主にしない旅行とは、単に高級ホテルが安く利用できるといったケースやビジネスの出張、ダイビングやヨガなどのライセンス取得や英会話学習の旅行プランなどで、こちらは突然、給付の対象から外れることになった。

 だが待ってほしい。

「だったらIR(カジノ)設立の目的であるMICE(複合型観光施設)の推進や菅さんが言い出したワーケーションはどうなのかって話になります。MICEは会議・招待旅行・国際会議・展示会の英語の頭文字を組み合わせたもので、これらは大規模な施設を必要とする割には採算が取れない。だからカジノを併設して施設全体の経営を安定させつつ維持させるというのがそもそものIRの意味です。つまりはビジネス目的の観光促進策なわけです。ワーケーションはまさにそのまま。観光地に滞在しながら仕事をしようって話ですよね。ところがGoTo事業ではこれらが除外されることになった。全く一貫しない方針に振り回される業者としてはたまりませんよね」(カジノに詳しい経済ジャーナリスト)

 つまりは、観光政策を推進する上で「観光を主な目的としない旅行」などと言い出すこと自体がナンセンスで、要は、いわゆる「観光を主な目的とする旅行」を取り扱っていて政治力もある大手旅行業者にだけ金を流したいという意図が透けて見えるのだ。

 特定の業者だけに巨額の税金が投じられるシステム。とんでもない話があったものだ。

(猫間滋)

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