東京、神奈川、埼玉、千葉に出されていた緊急事態宣言は解除されたものの、昨年7月より始まった「GoToトラベルキャンペーン」は、昨年末に中断されたままだ。果たして「GoToトラベル」とコロナ感染拡大に因果関係はあるのか。政府が続ける曖昧なコロナ政策の顚末を追う。
「地方の繁華街が潰れかかっています。なんとか救っていただきたい。今日はおすがりするような気持ちでやってきました」
3月18日、自民党本部で取り囲む記者に答えたのは鳥取県の平井伸治知事だった。この日、32県の知事が連名で与党、内閣府、国土交通省に対して、GoToトラベルの再開を要請したのだ。しかし、政府はいまだ再開には慎重な姿勢を見せている。
ジャーナリストの鳥越俊太郎氏が持論を展開する。
「政府は、新型コロナ感染拡大の防止(ブレーキ)と経済(アクセル)の両立を目指しているが、結局、新型コロナの分科会の専門家たちや官僚の慎重論を聞き入れすぎたんです。つまり、感染拡大の防止と経済の両立と言いながらも、ブレーキのほうに偏りすぎてしまっている」
鳥越氏はさらに、
「国内ではワクチンや薬があるにもかかわらず、毎年3000人もの人がインフルエンザで亡くなっていますが、新型コロナのように、わざわざテレビや新聞で死者数を発表したり、ニュースとして大々的には取り上げないですよね。ところが、新型コロナは、一部の感染症の専門家たちが、ようやく自分たちの出番が到来したとばかりに大騒ぎして、マスコミもそれに便乗したことで、社会全体に過剰なコロナ自粛の風潮が出来上がった。このダメージは大きい」
実際、経済活動がストップすることによる悪影響は、すでに露見している。倒産件数や失業者数は、増加傾向にあり、今後、さらなる経済損失も指摘されている。ある医療関係者は語る。
「感染拡大防止の観点からすると、人が移動すれば当然、感染拡大のリスクは上がります。先頃、感染者が急増した宮城県では独自の緊急事態宣言が発令されましたが、急増の要因のひとつとして、発生から10年が経過した東日本大震災の関連行事のため、首都圏を中心に全国から多数の来訪者があったからとも言われています。GoToトラベルが大きなリスク要因であることには間違いない」
*「週刊アサヒ芸能」4月8日号より