慎之助が継承する原巨人“独走采配”の秘密「ノムさんもボヤいたバント指示」

 2年目となった第3期原ジャイアンツの強さはまさに本物。開幕以来、常に白星が先行し、9月末までに積み上げた貯金はなんと27。このまま独走Vが濃厚だ。そんな中、後継者、阿部慎之助2軍監督の「ヘッド代行」が話題になった。両者を知る名参謀が、球界最強師弟の秘密を明らかにする。

 リーグ優勝した昨季にも共通することだが、今の巨人は戦力的に決して恵まれたチームではない。
 今季の規定打席到達者は坂本勇人(31)、丸佳浩(31)、岡本和真(24)の3人だけで、これはリーグ最少人数(10月3日現在、以下同)。先発ローテに目をやっても、開幕12連勝と八面六臂の活躍を見せる菅野智之(30)を除けば、高卒2年目の戸郷翔征(20)が8勝と役割を果たしているのみなのだ。

 となれば、首位を独走する現在の巨人の強さを語る際に、原辰徳監督(62)の采配手腕については避けて通れまい。12年から3年間、原巨人で1軍戦略コーチと打撃コーチを歴任した橋上秀樹氏は、快進撃の秘訣をこう明かす。

「指導者として原監督が優れているところはいくつもあると思いますが、特筆すべきは勝負どころを見極め、策を素早く繰り出す決断力です。例えばチームの4番に対しても、チャンスとみれば送りバントの指示を出すことをためらいません。私は楽天時代に野村克也監督の下でヘッドコーチを務めましたが、あの野村監督ですら、そうした原監督の采配を見て『原はすごい。俺はあんなこと、ようせんわ』とボヤくほどでした」

 勝利をもぎ取るためには、時に非情とも言える采配を振るのが、昨今の原監督の代名詞とも言える。結果として、今年9月11日にはV9時代の監督だった故川上哲治氏を抜く1067勝を挙げ、監督としての通算勝利数が球団歴代第1位を記録した。名実ともに、歴史ある読売巨人軍でも屈指の指揮官であることを証明したのだ。

 そして、そんな原監督からの明確な「後継者指名」を受けたのが、指導者としての野球人生を歩み始めたばかりの阿部慎之助2軍監督(41)。コトの発端は9月16日のこと。元木大介1軍ヘッドコーチ(48)が急遽、虫垂炎で入院、手術を行うことになり、その報告を受けた原監督は、即座に阿部2軍監督を「ヘッドコーチ代行」として東京ドームに呼び寄せるや、その日から1軍のゲーム指揮に関わらせたのだ。

「2軍監督がヘッドコーチの代行なんて、これまで聞いたことがありません。そもそも昨季はヘッド職を置いていなかったし、元木ヘッドの離脱期間、どうしても必要だというわけでもない。仮に代行を立てるにしても、吉村禎章作戦コーチ(57)ら、経験豊富な1軍のスタッフで事足りるはずです。そうしなかったということは、チーム内外に『自分の後継は慎之助だ』とアピールする狙いがあったとしか思えません。加えて、原監督自身がヘッドコーチだった長嶋茂雄監督(84)時代に帝王学を学んだように、慎之助にもいち早く1軍の指揮を経験させたかったのでしょう」

 この抜擢は元木ヘッドコーチの現場復帰までという「期間限定プラン」ではある。とはいえ、ペナント争いの大勢がすでに決していた時期でもあり、昨季の就任以来、「後任育成は自分の役割」と語っていた原監督にとって、即断即決の好条件がそろっていたというわけなのだ。

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