ワクチンや治療薬の開発にはメドが立たず、コロナショックはいつまで続くのか、先が見えない状態が続く。みずからの手で感染から身を守るしかない中、ある物質が注目を集めている。
薬草研究家の平田真知子氏が断言する。
「とにかくウイルス感染の予防としては、現状ではカテキンを飲むのが一番かもしれません。かつてMERSウイルスの脅威が騒がれた時も、私はすぐに『カテキンがいい』と周囲に勧めたくらい。病気になる前に、病気にならない体質作りをしてくれるのがカテキンなんです」
コロナウイルスが侵入するまさに水際で体をガードしてくれそうな存在がカテキンだ、というのだ。なんだ、緑茶に含まれるアレか、手軽じゃないか、と誰もが思うところ。ポリフェノールの一種で、お茶に特有の、渋い成分のもとにもなっている。
90年代、このカテキンがブームを起こしたことがあった。当時、日本国内で最もガンの罹患率が低いのが静岡県で、どうもその原因が「茶どころ」の緑茶摂取量、ことに中に含まれるカテキンが影響しているのではないか、と注目を浴びたのだ。
そのカテキンについて、研究の過程で、ある重要な効果が明らかになっている。すなわち、インフルエンザや風邪の原因となるウイルスに直接作用し、その感染力を無力化する、あるいは弱める力があるということだ。医療ジャーナリストによれば、
「インフルエンザウイルスは、ウイルス粒子の表面から突起したたんぱく質を細胞に引っ掛けるなどして、そこから喉や鼻腔の細胞に感染します。カテキンはその突起部分に結合して突起を埋めることで、細胞表面へのウイルス吸着を阻害する働きがある。したがって、カテキンはインフルエンザウイルスに限らず、新型旧型を含めて全てのウイルスに力を発揮します」
ウイルスは細菌と違ってみずから増殖する能力はなく、ある特定の細胞に取りつき、その細胞の中で増殖する。一般的にワクチンによる予防とは、体の中にウイルスの抗体を作って、その抗体でウイルスが細胞に取りつくのを防ぐ仕組みだが、残念ながら、ワクチンで作られた抗体が全ての種類のウイルスに効果があるわけではない。ところがカテキンの場合は、どんなウイルスに対してもその吸着を阻止できるという。つまり、コロナウイルスが体内に入り込もうとしても、シャットアウトすべく働くというのである。
それならば、コロナ予防のためにも毎日、緑茶を飲めばいいではないか。ところが、そう簡単にはいかないのだと、医療ジャーナリストが指摘する。
「カテキンの効用を得るためには、1日最低10杯程度の緑茶を飲まないといけないんですね。しかも、茶葉の中にはカフェインも含まれています」
緑茶10杯を毎日飲み続けるのはとても大変。そんなに水分を摂れば、睡眠時の頻尿や、カフェインの興奮作用で眠れなくなる不安が付きまとう。飲み合わせでカフェインがNGになってしまう薬もある。特にコロナ感染が重症化する危険のある中高年にとっては重要な問題だ。
そこで考えられたのが、緑茶からカテキンだけを抽出する方法だった。
実は1920年代から30年代にかけて、緑茶からカテキンの一種であるエピガロカテキンなどを分離する研究が行われ、80年代には緑茶からカテキンを完全に分離抽出する技術が開発されている。
「今はカテキンを増量した『ヘルシア緑茶』などの飲料が人気ですが、もともとは九州の伝統的な製薬所の社長が九州大学の助教授を務めていた時に、カテキン分離抽出法を論文発表したのがきっかけです。『ヘルシア緑茶』などの高濃度カテキン商品のカテキン含有率は、だいたい80%程度。ところが、カテキンのパイオニアたるこの製薬所が開発したカテキン原末は含有率95%で、残りの5%もポリフェノールというものでした」(薬事関係者)
この薬事関係者によれば、1日のカテキン摂取量は480ミリグラムが目安だといい、
「例えば顆粒状になったものを溶かして飲むわけですが、その水溶液でうがいをすると喉の粘膜が保護され、ウイルスや細菌感染の予防に役立ちます。さらに歯周病や虫歯、口臭の原因となる口の中のバイ菌の増殖を抑える働きもあります」
好きな飲み物に混ぜるもよし、熱に強いため、料理に入れてもおいしく摂ることができる。
「今はどうしても抗ウイルス効果ばかりに目がいきますが、カテキンの健康効果の中でも、特に大きいものが抗酸化作用です」と力説する医療ジャーナリストが続けて解説するには、「カテキンは活性酸素が人体の組織を攻撃するのを食い止め、病気に発展するのを防ぐ働きがあります。その抗酸化力は、ビタミンCやビタミンEの数倍から数十倍になると言われています。副作用もありません。この他、血糖値とコレステロール値の降下、体脂肪燃焼など、カテキンはさまざまな機能を持ち合わせています。コロナ感染による死因を調べると、血栓が血管に詰まるケースが少なくない。カテキンは血糖値の上昇を抑えるなど、血栓の生成を防ぐのにも役立つため、基礎疾患がある人には特にお勧めしたいのです」
人は呼吸により酸素を体内に取り込む。酸素は最終的に二酸化炭素や水として体外に排出されるが、精神的・肉体的ストレスを強く受けたり、強い紫外線を浴びたり、喫煙したりすると、酸素の代謝がスムーズに行われなくなる。すると一部が体内で活性酸素、別名「悪玉酸素」となって、無差別に体内の組織を傷つけていく。この状態が続くと生活習慣病や老化が進みやすくなり、例えば血管の組織が酸化すると血管の柔軟性が失われて動脈硬化が起こり、血栓ができれば詰まりやすくなる。
抗酸化作用は全ての病気に対抗するとも言われる、重要なもの。体内の酸化現象を抑え、組織が老化するのを防ぎ、免疫力を保つことにつながるからだ。いわば免疫力強化の面からも、カテキンはウイルスの侵入を防ぐ重要な「盾」になると言えよう。