ミネラルウォーター使用やタンクへの水継ぎ足しで起こる肺炎「加湿器肺」とは

 猛威を振るってきたインフルエンザも、2月に入りA型からB型への移行が始まっている。加えて地域によっては花粉症の発症が報告され始めているが、これからの季節、部屋の乾燥を防ぐため、本格的な加湿器活用を始めるという方も多いだろう。

 しかし、加湿器を頻繁に使うこの時期は、掃除が不十分なために起こる肺炎「加湿器肺」が急増する季節でもあるのだ。

 加湿器肺とは、アレルギー性肺炎の一種「過敏性肺炎」の1つで、加湿器のタンク内の水にカビや細菌などの微生物が繁殖。それが蒸気とともに室内の空気中に広がり、その空気を吸い込むことによって肺に炎症が起こるものだ。

 症状としては咳や発熱など、風邪に似たものが多いが、「薬を飲んでも治らない」「家に帰ると症状がでる」「加湿器を使わないと症状が改善する」といった、この3つに当てはまる場合は、加湿器肺の疑いがあるため、早めに医師に相談することをお勧めしたい。というのも、この病気、そのまま放置しておくと重症化する恐れがあり、最悪呼吸困難となる場合があるので、決して侮ってはいけない病気なのである。

 加湿器肺にならないために、まずは加湿器の使い方を見直すことが重要。タンクの水にミネラルウォーターを使っている人も多いが、ミネラルウォーターはカビや雑菌が繁殖しやすいと言われている。一方、水道水には微量の塩素が含まれており、塩素の殺菌効果により雑菌の繁殖が抑えられるので、タンクの水は水道水を使うようにしたい。

 また、水切れが心配でつい水を継ぎ足しながら使ってしまう人もいるが、これも危険。タンクに入れた水道水の塩素は半日ほどで抜けてしまうため、雑菌が繁殖しやすくなる。多少手間にはなるが、水は必ず入れ替えて使うこと。そして週に一度は加湿器内をスポンジなどで水洗いしておくといいだろう。加湿器内を常に清潔に保ち、ミネラルウォーター、タンクへの水の継ぎ足しを避ける。これだけで、加湿器肺になるリスクはかなり軽減するので、是非、正しい使い方をこころがけてもらいたい。

 加湿器から噴霧されたカビやホコリ、細菌などを長期にわたり吸い続けると、慢性的な炎症によって肺胞が硬くなる。言うまでもなく、一度硬くなった肺胞は元には戻らない。そうなると咳や息苦しさに生涯苦しめられることにもなりかねない。

 花粉症のシーズン到来で、納戸にしまっておいた加湿器を取り出し、いよいよ本格的に稼働という人も多いだろうが、当然のことながら、使う前にはきれいに洗い、使い始めたらこまめに洗浄すること。加湿器といえど、使い方ひとつで害になることをお忘れなく。

(健康ライター・浅野祐一)

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