4月28日、1日の新規感染者数が世界最多となる36万人を超えたインド。日を追うごとにその数は更新の一途をたどるばかりだが、専門家によれば、インドにおける感染が再拡大した原因の一つが、「二重変異株」だと言われる。
二重変異株とは、ひとつのウイルス内の重要部分に2つの変異株の特徴を併せ持つ、というもの。そのため、感染力が強まり、中和作用の低下を引き起こす可能性があるとされている。医療ジャーナリストが語る。
「新型コロナウイルスは『リボ核酸』と呼ばれる遺伝情報を持っていて、ヒトなどの細胞に入り込み、それを複製して増殖していきます。ところが、コピーする際にミスをすると変異が起きる。つまり、そのパイが大きければ大きいほど、新たな変異ウイルスが発生する確率が高くなるということ。それが二重変異株のようなケースを生み出しているとされています」
ところが、二重変異株により感染拡大が爆発的に広がるインドで、なんと「三重変異株が確認された」とのニュースが「Times of India」など複数のメディアで報道されたのである。
地元メディアによれば、二重変異株の検査にあたるインドのコロナウィルス科学者らが、マハーラーシュトラ州、デリー州、西ベンガル州、チャッティスガル州など4つの州から持ち込まれた検体を分析。すると、サンプルのなかに、2つの三重変異株が検出されたのだという。
「研究者らはこれを『ベンガル株』と呼び、二重変異株よりさらに感染力が強い可能性を指摘しています。この三重変異株が二重変異株から進化したものか、あるいはそれ以外から生まれたものなのかはわかりませんが、そうなると既存のワクチンでは太刀打ちできない可能性もある。インドでは患者用の酸素ボンベが底をついてしまい、ボンベの盗難事件も相次いでいますからね。このままいったら医療崩壊どころか州そのものが崩壊する危機もあるため、研究者らは不眠不休で分析に努めているそうです」(前出のジャーナリスト)
そんななか、日本でも「二重変異株」が国内で20件以上確認されていることが判明。加藤官房長官は「水際対策や監視体制の強化を通じ、感染拡大防止策を徹底していきたい」としているが、
「相変わらず空港検疫にはPCR検査よりも精度が劣るとされる抗原検査が採用されていますからね。そう考えると、残念ながら『三重変異株』が日本に上陸するのも時間の問題かもしれません。とにかく、政府には水際対策を徹底させてほしい。それ以外に食い止める策はないのですから」(同ジャーナリスト)
米国務省は19日、新型コロナウイルスの世界的大流行を受けて渡航情報を改定、最も危険とされるレベル4(渡航してはいけない)を世界80%の国に拡大すると発表したばかり。
それに比べて日本政府の対応は、あまりにもゆるいと言わざるを得ない。もうそこまで迫った危機をどう回避するのか。とにかく、後の祭りにならないよう、願うばかりだ。
(灯倫太郎)