最下位から白星量産!矢野阪神が上昇気流をつかんだ歴史的一戦

 阪神が苦手としていた中日・大野雄大投手を攻略したのは7月17日、本拠地・甲子園球場で行われた一戦だった。矢野燿大監督は打撃不振の近本光司をスタメンから外すなど仕掛けて出たが、勝因は新打線ではなかった。“阪神らしさ”で勝ったようだ。

「今年の大野はまだ本調子ではないみたい。真っ直ぐを投じても、それがファールになって、ストライクカウントを有利にしていたんですが、今年はキレがありません。変化球の精度もイマイチです」(名古屋在住記者)

 大野はここまで勝ち星ナシの3敗。防御率も4点台で、昨季の圧倒的なピッチングはまだ見せていない(7月27日時点)。

 甘いボール、失投を見逃さなかったのは、不振とはいえ、阪神打線の怖さだ。攻撃の細かなサインを出すよりも「打者対投手」の勝負に出るのは“阪神らしさ”と言えるだろう。

「糸原は『対大野をイメージして打撃練習をしてきた』と言いました。大野のツーシームを想像し、バットスイングをしてきたそうです」(在阪記者)

 阪神打線は、大野のツーシームに翻弄されてきた。想像しながらバットを振り続けた甲斐もあって、糸原はダメ押しの適時打で今季初の猛打賞をマークした。

「サンズが先制打を放ったのですが、仕留めたのはツーシーム。初顔合わせのサンズが大野のツーシームをいとも簡単に打ち返したので、阪神ナインは『イケる』と確信したようです」(前出・在阪記者)

 もっとも、糸原のように「打倒・大野」のイメージ練習をやってきた選手は他にいない。難しく考えないのも“阪神らしさ”と言えるが、年度をまたいで23イニングぶりの大野からの得点、そして、土をつけたのは2017年4月28日以来となる“歴史的勝利”だった。

 開幕3連敗でつまずき、6月は10戦して8敗。一時はシーズン100敗ペースとも揶揄された。しかし、7月に入って上昇気流をつかんだ要因は、「大野に勝ったという自信」と指摘する関係者も少なくなかった。

 巨人独走を止めるとしたら、物事を難しく考えないチームカラーの阪神が一番手ではないだろうか。

(スポーツライター・飯山満)

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