英紙の「フィナンシャル・タイムズ」が12月9日、中国政府が公的機関などで利用する外国製のコンピューターやソフトに関して、3年以内に国内製に切り替えるよう指令が出ていたと報じ、日本でもこのニュースが伝えられた。
「激しさを増すばかりの米中貿易戦争は、そこに香港抗議デモや新疆ウイグル自治区での人権侵害に対するアメリカの政治的牽制も加わって、もはや泥沼化しています。中国としてはファーウェイが排除されたことに対する対抗措置ということなのでしょうが、まさかそこまでやるかというのが正直な感想ですね」(全国紙記者)
先の報道などを総合すると、今回の措置は2017年に施行されたサイバーセキュリティ法に基づくもの。なので、もともと外国への依存度を低める予定だったところにトランプ大統領がファーウェイを排除してきたので、その動きを急加速させたということなのだろう。これにより2019年の政府の国内調達は30%だったものが、20年には80%、21年には100%にし、30%、50%、20%ずつ増やしていくことから「3−5−2」規則と呼ばれているという。
中国国内の推計によれば、2000万〜3000万台のIT機器が全て国内製に切り替えられる見通しだという。
「ただ今回の措置でいまいちよく分からないのが、規制がどの程度まで厳格にかけられるかでしょう。中国製パソコンといってもOSはWindows、チップはIntel、メモリは韓SAMSUNGだったりしますからね。中国にもこれらのメーカーはありますが、性能面で劣るのは言うまでもありません。また今回の措置はハードだけでなくソフトも含まれるので、中国製としては一般的なOSの中標麒麟(NeoKylin)向けのソフトをこれから開発してこれも入れ替えていくということになる。中国では2015年辺りからKylinへの乗り換えを推奨してきましたから、これからは本格的に移行していくということなのでしょう」(同前)
いずれにしても純国産への移行は本来ならばまだ時間を要するはずだ。だから部分的運用が行われる可能性もあるが、売った喧嘩はあまりにも大きい。
「移行に時間はかかるでしょうが、近い将来は実現させるのでしょう。そういう国だし潜在的パワーもありますから。それより気になるのは、ビジネスの世界に政治の争いが持ち込まれる迷惑ですね。世界のテック企業にとって中国市場はあまりに巨大でかつ、生産拠点でもあります。そんな大きくてこれまでは相互依存的だった空間を、今後は白黒で色分けして一方は追い出すというんですからどれだけ影響が及ぶものやら。また政府系と言っても、中国の場合は民間といっても半官半民みたいなところがあるので、どこまでの範囲まで適用されるのかが気になります。いずれにせよ、米中のみならず世界中のテック業界の地図が大きく塗り替えられてしまうかもしれない、そういった段階まで中国が踏み込んだということです」(経済ジャーナリスト)
ただ、「つばぜり合いは既に様々なところで起こっていましたが」とも言う。
「ファーウェイ排除ばかりに注目が集まりましたが、アメリカでは中国の通信大手のモバイルチャイナの米国市場参入の申請も却下しています。ちなみに日本でも、海上保安庁がこれまで採用していたチャイナドローンを来年から調達しないとしています。理由はもちろん、国家安全保障上のリスク。この辺りは日米で歩調を合わせているのです」(同前)
もはや殲滅戦の様相すら呈してきた。
(猫間滋)