トランプ政権が発足する。昨年秋の大統領選直後から、トランプ氏はウクライナ紛争の解決に強い意欲を示し、フランスを訪問した際にはマクロン大統領を交えてゼレンスキー大統領と会談し、終戦に向けて様々な条件を議論したとされる。一方、最近になってトランプ氏がプーチン大統領と会談するとの報道があったが、おそらく実現する可能性は高いだろう。もうすぐウクライナ侵攻から3年となるが、トランプ大統領の再任は今後の行方を大きく左右することになろう。
では、プーチン氏はどう対応していくのだろうか。プーチン氏にとっては、バイデン大統領よりトランプ大統領の方がメリットが多い。最大の理由は、トランプ氏はロシア軍がウクライナ東部やクリミア半島を実効支配する現状での戦争の終結を目指しているからだ。最近は欧州の一部の国々でも、ウクライナは領土を諦めて終戦に応じた方がいいとする声も聞かれるが、トランプ氏は内容ではなく結果重視の終戦案を双方に持ち掛けることになる。要はトランプ氏が双方に交渉のテーブルに就くよう要請することになるが、プーチン氏の方がそれに積極的に関与する可能性が高い。
プーチン氏にとって絶対に譲歩できないのは、占領地域からのロシア軍の撤退、そしてウクライナがNATOに加盟することだ。それを要求されない限りトランプ氏とともに終戦に向けて協力していくことが考えられる。そして、ウクライナが交渉に積極的ではないことをトランプ氏に強く訴え、ロシア有利の状況での終戦を進めていくことになろう。
だが、プーチン氏にとってそれは狙いの1つでしかない。これまでの発言から、プーチン氏が現状の実効支配で満足するような姿勢は一切見せておらず、首都キーウの掌握、ゼレンスキー政権の崩壊、そして親露的な傀儡政権が誕生するまで戦争を続ける可能性が濃厚だ。つまりプーチン氏にとってトランプ的終戦はあくまでも休息期間に過ぎず、2期目のトランプ政権終了後に戦闘を再び再開することを描いている可能性さえある。
(北島豊)