昨年末からの寒波により大雪に覆われる日本海側に対し、太平洋側では連日、乾燥する日が続いているが、冬はただでさえ肌がかさつく季節。この乾燥により今年は例年以上にアレルギー疾患やアトピーの発症も急増。体のあちこちにかゆみを訴える人が多いと聞く。
皮膚というのは外側から表皮、真皮、皮下組織に分かれ、表皮の厚さはおおよそ0.2mm 程度。一番外側には角質細胞が積み重る「角層」があり、角質細胞の隙間を埋めているのが「セラミド」とよばれる脂質だ。つまり、このセラミドが角質どうしを接着する役割のほか、肌に潤いを与えるためも水をためる役割を担っている。
ところが、加齢などにより、このセラミドをつくる力が低下し、セラミドの量が減少すると結果、角層の構造に問題が生じる。角層は外界の刺激から体を守ると同時に、体内の水分が外に漏れ出るのを防ぐバリアの働きをしているため、バリア機能が低下。さらに、特に冬場は空気の乾燥や冷たい風によって水分が蒸発しやすくなるため、想像以上に皮膚から水分が失われ、カサカサの乾燥肌を作り出し、かゆみを引き起こす要因になってしまうのだ。
通常、かゆみの原因として挙げられるのは、虫刺されやかぶれ、アトピー性皮膚炎、じんましんなど、皮膚が赤く腫れるといった皮膚トラブルが原因で起こるタイプのかゆみだ。
だが、実は見た目にはなにも異常がないのにかゆみが治まらず、それが徐々に全身に広がり、市販のかゆみ止めもまったく効果がないという場合がある。そんな場合には、肝臓病や糖尿病などの内臓の病気が隠れている可能性があるので、早めに病院を訪ねるべきだ。というのも、内臓疾患があると内臓の機能が低下してしまい、肌が新しく生まれ変わるターンオーバー(新陳代謝)が正常に働かなくなる。これは、内臓の機能低下で、体の代謝が悪くなり、老廃物が排出されず血行が悪くなってしまうからだ。
ただ、内臓疾患の有無や種類は、皮膚の状態からだけでは一概に判断できない。そのため、皮膚科で抗ヒスタミン薬をもらい、塗り続けてもかゆみが治まらない場合は内科による問診や視診、血液検査などをおすすめしたい。かゆみをともなう内臓疾患として、糖尿病、腎不全、肝硬変の一種(原発性胆汁性肝硬変)、内臓がんなどがあるが、かゆみをそのまま放置していると病気そのものが悪化する可能性がある。放っておけば今に治る、などと侮らず、かゆみが続く場合はまず一度、医師を訪ねてみたほうがいいだろう。
(健康ライター・浅野祐一)